狭いけど、貯金はできてる
だから焦ってない

――北京に住む密さん

写真はイメージ Photo by Alex Tyson on Unsplash

10/21 11:17 / 発信国:中国 / 記者:工藤

家賃1万7000円の「元廊下」2畳に住む北京の30代 かわいそう、で合ってる?

北京に住む30代の女性が、幅93センチ、長さ3.6メートルの部屋で暮らしている。広さは2畳ほど。もともとは廊下で、大家が両側に壁とドアを付けて部屋にしたのだという。家賃は日本円で約1万7000円。フジテレビ系のFNNが10月20日に伝えた。

え、廊下に住んでいるのか。そう思って読み進めると、もう一つの数字が出てくる。この女性、密さんの月収は23万円ほどだという。

「狭いけど、必要な条件は満たしている」

密さんの部屋には窓がない。トイレと水道は共同で、料理は廊下でする。同じ建物には20〜30世帯が住んでいて、周りにも似たような物件が多い。FNNによると、密さんは自分のこうした暮らしをSNSで発信している。

客のいない家具売り場
写真はイメージ Photo by Di-Mension Living on Unsplash

本人は取材にこう話した。「この部屋は確かに狭いけど、生きていく上で必要な条件は満たしています」「貯金があるから、生活に不安・焦りを感じません」。職場までは歩いて7〜8分だという。

なぜ、わざわざ。密さんはこうも話している。「お金を稼ぐことが昔ほど簡単ではありません。北京のように家賃が高い都市では、多くの人ができるだけ消費を抑え、貯金を増やすことを選ぶ。将来のことを考えてです」

数字にすると、確かにそうなる。月収23万円に対して、家賃は1万7000円。1割に届かない。手元には21万3000円が残る。

中国の景気そのものは重い。国家統計局が10月19日に発表した7〜9月期のGDPは、前年の同じ時期より4.5%増えた。政府が今年の目標にする「4.5〜5%」の、ぎりぎり下限だ。不動産開発投資は1〜9月で20.6%減り、落ち込みがさらに広がった。小売りの売上高は1.1%増どまり。産経新聞によると、新築住宅の価格は主要70都市の7割で下がっている。

FNNが取材した広東省佛山市の8階建ての家具モールは、ほぼ閉店状態だった。スタッフはこう言った。「家が買えなければ、家具を買っても意味がない」

中国の決まりでは、貸してはいけない部屋

気になることがある。廊下を部屋にして貸す。これは、やっていいことなのか。

集合住宅の細い廊下
写真はイメージ Photo by Adrià Jiménez on Unsplash

答えは、だめだ。中国の住房租賃条例の第七条に、はっきり書いてある。台所、トイレ、ベランダ、過道(廊下)、地下の物置、車庫といった、住むためではない場所は、単独で人に貸して住ませてはいけない。2025年9月15日から全国で始まった決まりだ。

ただ、密さんの部屋がこの決まりに照らしてどう扱われるのかは、FNNの記事には書かれていない。市や区がこの建物をどう見ているのかも分からなかった。分かっているのは、密さんがそこで暮らしていて、同じ建物に20〜30世帯が住んでいる、ということだけだ。

ネットの評判

Yahoo!ニュースのコメント欄には、21件の書き込みがあった。いちばん多く共感を集めたのは、中国と日本の給料を比べる声だ。「中国の給料は手取りですから、もう日本の地方は中国より貧しい」という指摘に、52件の共感が付いていた。

日本と重ねる声も多い。「日本も3畳賃貸が話題になった時期があった。似たようなもの」には22件。一方で「人として尊厳ある生活が失われている」と、暮らしそのものを心配する声もあった。

数は少ないが、密さんの選び方を「合理的で微笑ましい」と見る書き込みもあった。この一言が、本人の話にはいちばん近い。

不況の話として伝えられたニュースだが、本人がいちばんはっきり口にしたのは「貯金があるから、生活に不安・焦りを感じません」の一言だった。

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