気づいたら
うわーって感じ
――ある川でボート店を営む人が、増えた草を見て
写真はイメージ Photo by Chloë Forbes-Kindlen on Unsplash
1センチのかけらが、千葉の排水ポンプを止めた
8月、千葉県に大雨が降った。印旛沼の水位が上がったとき、東京湾側へ水を出す施設で、排水ポンプが1台止まった。ごみの流入を防ぐ柵に、上流から流れてきた草が大量に絡みついたためだ。このとき取り除いた水草とごみは、合わせて26トン。混ざっていたのは、南米から来たナガエツルノゲイトウという多年草だった。
この草は、1センチの茎のかけらからでも元に戻る。たった1センチ。兵庫県の説明では、太さ2ミリの根からも再生するという。
9月には、東京の葛西臨海公園の護岸にも大量に流れ着いた。公園の公式Xが、そのときの様子を出している。
Xでこの投稿を見る
1センチが、ちぎれて、流れて、ポンプの前に集まる
この草は水辺で育つ。茎はちぎれやすく、ちぎれたかけらは水に浮いて流れていく。乾燥にも強い。埼玉県は「乾燥に強いため、枯れているように見えても再生することがあります」と書いている。耐塩性もあり、海の近くの岸でも生きる。
茨城県稲敷市を流れる新利根川で、この草を見てきた松屋ボートの松田行弘さんは、増え方をこう話した。「定着すると根っこ生やして一気に増やす。倍々ゲームでどんどん流れてく感じ」。目立ってきたのは5〜6年ほど前からで、「気づいたらうわーって感じ」だという。釣りの大会をする場所も狭くなったそうだ。
では、草の話がなぜポンプの話になるのか。兵庫県は、この草が大量に生えると「排水溝や農業用水路を詰まらせる等水流を阻害する」と説明している。水の通り道をふさぐ草が、水をくみ出す機械の手前で山になる。8月の千葉で起きたのは、それだった。印西市で米を作る佐藤昭夫さんは、この草を「悪魔みたいなやつです」と言った。
止まったポンプがそのあとどうなったかは、読めた出典では分からなかった。
ネットの評判
葛西臨海公園の公式Xの投稿には、「被害が広がりませんように」「特定外来生物の撲滅に頑張ってください」と、公園を応援する声が並んだ。「正体を知り勉強になりました」と、名前を初めて知ったという人もいた。「本当に生命力強く、ほんの小さな1つの節でも残っていたら大変なことになりますよね」と、再生する力に驚く声もあった。賛否が割れている様子は、読めた出典には出ていない。
弱点は、水の中にあった
なぜ、そこまで強いのか。東洋大学などの研究グループが9月8日に公開した論文で、その一部が分かった。空気中に出た葉は、二酸化炭素をよく吸い込む。そこで作った養分を、この草は茎を伸ばすほうへ多く回していた。急いで水面まで届き、まわりの草より高い位置に葉を広げて、光を先に取る。強さの正体は、場所の取り方のうまさだった。
東京農工大学の藤井義晴名誉教授は「たとえ99%取っても、1%からまたすぐに再生してくるので、非常に根絶がしにくい」と話す。葛西臨海公園も、見つけるたびに取り除いてきた。それでも、流れ着いたものの下に隠れていた茎から、芽と根が出ていたという。
だから、見つけても自分で抜いて持ち帰らないほうがいい。この草は特定外来生物で、許可なく生きたまま運ぶと、1年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金になるおそれがある。取るなら根まで掘り出し、袋の口を縛って枯らす。捨て方は、住んでいる市町村の決まりに合わせる。
弱点も見えてきた。この研究では、長く水に沈めた葉は光合成の力が落ちた。この草は、水の中で使う新しい葉も作らなかった。水の草なのに、沈みっぱなしには弱い。東洋大学の広津直樹教授は「光を遮り水中に沈めれば成長を抑えられる」と話している。
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