この虫は、
スズメより重い

――ある動物園の説明に

10/7 17:51 / 発信国:ニュージーランド

ニュージーランド、島のネズミを消して虫を1万1千匹戻した

近所の雑木林から、ネズミが一匹もいなくなったとする。そのかわりに、手のひらに乗るほどの大きな虫が、落ち葉の上を歩き回っている——そんな林があると聞いたら、たぶん作り話だと思う。

作り話ではない。ニュージーランドの保全省が2026年10月2日、ウェタプンガという虫が絶滅の危機を脱したとする論文が出た、と発表した。15年かけて飼育で増やし、1万1千匹以上を45回に分けて10か所に放した結果だという。繁殖を担ったのは、バタフライクリークという施設と、オークランド動物園だ。

スズメより重い虫

ウェタプンガは、直翅目では世界でいちばん重い。ニュージーランドでいちばん重い虫でもある。メスは35グラムまで育つ。オークランド動物園は、普通のイエスズメより重いと書いている。

2004年には「国内で絶滅が危ない」に分けられていたが、2022年には「国内で増えている」に変わった。ただし、どちらも「脅かされている生き物」の中の段階である。守る手を止めれば、また戻る。

放す前に、島から獣を抜いた

では、なぜ減ったのか。人が森を切り、人が連れてきたネズミやオコジョが食べたからだ。かつてはノースランドからオークランド、グレートバリア島まで広くいたのに、やがて本島から姿を消し、テ・ハウツル・オ・トイ(リトルバリア島)だけに残った。

ここが、この話の肝だ。放した10か所は、全部が「獣のいない場所」である。人が持ち込んだ獣を取り除いた8つの島と、柵で囲った本島の保護区2か所。虫を増やす前に、人は場所のほうを直していた。

元の島でも、同じことをしていた。野生化した猫を追い出す作業が終わったのが1980年6月。キオレを取り除く作業が終わったのが2004年7月。それでやっと、虫を食べる獣のいない島に戻った。

では、人の手で虫を増やすことと、日本に外来種が持ち込まれることは、何が違うのか。外来種では、生き物が先に入り、環境はあとから崩れる。ウェタプンガを追い詰めたネズミも、もとは人が運んだ外来種だった。人の手が入ったかどうかではなく、環境を先に戻したかどうかが違う——15年の記録は、そう読める。

守られたのは、虫だけではない

ニュージーランドには、コウモリを除いて陸にすむ哺乳類が元からいなかった。ネズミの役が空いていたので、虫がそこに入り、ネズミほどの大きさになった。コロンビア大学のジャーナリズム大学院が出している科学サイトは、そう説明している。

ニュージーランドの森とシダ
写真はイメージ Photo by Raquel Moss on Unsplash

ウェタの仲間はニュージーランドに1億9千万年以上いる、とオークランド動物園は書いている。保全省によれば、この国だけで100種以上に分かれた。守られたのは、1種の虫ではない。

放した島は、いまどうなっているのか。虫を数えたら、1人が1時間に28.5匹を見つけた。元いたリトルバリア島では、1.4匹だった。放された側の島のほうが、およそ20倍も見つかる。

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