ヒールはいてる
場合じゃないでしょ
――批判は、服装にだけ集まった
中国オープン優勝の鄭欽文、長城で白いドレス 「アスリートらしくない」
中国のテニス選手、鄭欽文(24)が、白いドレスとヒールで優勝トロフィーを抱えた写真をSNSに出した。場所は北京郊外の八達嶺長城。するとこの写真に「アスリートらしくない」「男性の気を引くためじゃないのか」という批判が集まった。優勝そのものにケチをつけた人は、ひとりもいない。文句は全部、服に向いている。どうしてそうなるのか。
「きれいな服を着て、トロフィーと写真を撮りたい」
順番から書く。10月11日、北京で開かれた中国オープンの女子シングルス決勝で、鄭欽文はロシアのミラ・アンドレエワに7-5、6-4で勝った。2004年に始まったこの大会で、中国の選手が女子シングルスを制したのは初めてだ。WTA1000と呼ばれる大きな大会での優勝も、彼女には初めてだった。
試合のあとのインタビューで、鄭欽文はやりたいことをいくつか挙げている。その一つが「きれいな服を着て、トロフィーときれいに写真を撮りたい」だった。表彰式では、子どものころ好きだったアニメの主題歌をその場で歌った。チームとカラオケに行きたい、とも話している。
翌12日、彼女は八達嶺長城に行った。白いドレス、金色のとがったヒール、腕にはロレックス。服と靴はディオールのもので、鄭欽文はこのブランドのグローバルアンバサダーを務めている。カメラマンが何人も入った、本格的な撮影だった。その日、観光に来ていた人たちが偶然彼女を見かけ、「長城で鄭欽文に会った」という投稿が中国のネットで一気に広がった。長城の管理側も、彼女がその日に来たことを認めている。写真を投稿した鄭欽文は、「長く待っていたトロフィー写真」と書き添えた。
ネットの評判
中国のSNS、微博(ウェイボー)に付いたコメントが、そのまま論争になった。がっかりした、という声はこうだ。「この人は枠からはみ出す人だと思っていたのに」。スカートとヒールを選んだことで、古い女性像に戻ったように見える、という言い分らしい。試合をしたばかりの足でヒールを履くのはどうなのか、という心配も出た。中央日報日本語版によると、「男性の気を引くためではないか」という書き込みもあった。
一方、それに言い返す声のほうが数としては多かった。「枠からはみ出すことと、スカートを禁じることは別だ。本当の自由は、選べることだ」。「仕事で一番上まで行っても見た目で裁かれるなら、結局それは同じことの繰り返しじゃないか」。コートでは全力でやって、コートの外では好きな格好をする。その二つは矛盾しない、という見方だ。男性の優勝者がスーツで撮影すれば「洗練されている」と褒められるのに、という二重基準の指摘も出ている。
鄭欽文自身がこの論争に何か言ったかどうかは、今回読んだ出典では確かめられなかった。
54位の選手が、7試合勝ち続けた
服の話で抜け落ちているのが、この優勝の中身だ。鄭欽文は2024年のパリ五輪で金メダルを取ったあと、ひじの手術を受け、1年近く勝てなかった。世界ランキングは今季の途中で160位まで落ちている。中国オープンには、54位で、大会側が出すワイルドカードをもらって出た。そこから7試合、勝ち続けた。2004年にこの大会が再開されてから、ワイルドカードで優勝した選手は彼女が初めてだ。この優勝で、ランキングはトップ30に戻る。
批判が集まったあの写真の中で、彼女が抱えているのは、2004年に始まった大会で、中国の選手がだれも取れなかったトロフィーだ。
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