誰も指示していない。
なんとなく、そうなった

――ルビオ米国務長官が、記者に

10/20 11:58 / 発信国:ウクライナ / 記者:工藤

ウクライナの迎撃ドローンは時速161キロで通信が切れる 警報は着弾1分前だった

ロシア軍が10月18日の夜から19日にかけて、キーウとキーウ州に弾道ミサイルを16発撃った。狙いはエネルギーの施設で、キーウ州では1人が死に、10人がけがをした。ゼレンスキー大統領はそのあと、SNSに「またしても警戒情報が友好国から提供されなかった」と書いた。名前は出していないが、アメリカのことだ。

ロシアの弾道ミサイルがどこへ飛ぶかを早いうちにつかめるのは、いまはアメリカだけだとされる。テレビ朝日系の報道では、アメリカの早期警戒システムは着弾の5分前に感知でき、住民の避難に役立っているという。その5分が来なかった、という話だ。

誰も指示していない。なんとなく、そうなった

アメリカ側は、そろって否定している。ルビオ国務長官は19日、情報共有を中断したことはないと話した。数日前の不具合は「早期警戒システムのソフトの問題」だと説明した。衛星通信の速度が落ちた件についても、18日にこう話している。「誰もスターリンクの速度を落とせと指示していない。なんとなく、そうなった」

トランプ大統領は「私じゃない。イーロンでもないと思う」と記者に話した。そのイーロン・マスク氏はXに、スターシールドは米政府が所有・管理していて、速度や使い方の制限は米軍が、最終的には大統領が決めると書いた。ベッセント財務長官は18日、NBCの番組で、ゼレンスキー氏の主張を「とても無責任だ」と言った。

では、誰が決めたのか。ロイターは、指示はホワイトハウスの内部から出たと伝えた。英テレグラフは、マスク氏がトランプ氏に持ちかけ、トランプ氏が了承したと、4人の関係者の話として報じた。米議会では、共和党のターナー下院議員が「議会の調査が必要だ」と話し、超党派の上院議員9人が国防省の監察官に調査を求める手紙を出した。報道の多くは、いまもこの「止めたのか、止めていないのか」を追っている。

現場の技術者は「1分前に届いた」と話した

その応酬から少し離れたところに、別の声がある。ゼレンスキー氏の顧問で無線の専門家、セルヒー・ベスクレストノフ氏はBBCに、アメリカからの情報は来るときと来ないときがあると話した。前の夜はどうだったかと聞かれると、「来たが、攻撃の1分前だった」と答えた。そして「もう人が死んでいる」と言った。

現場では、もう一つ別のことが起きている。10月13日から14日の夜、ウクライナ軍が使うスターシールドの端末が、時速161キロを超えると切れるようになった。予告はなかった。ベスクレストノフ氏は、部隊に何の知らせもなく、いくつもの任務が失敗したと話した。第7快速反応軍団は速度の制限に気づいて、予定していたドローンの作戦を取りやめた。部隊によっては時速60〜70キロで切れたという報告もある。

ロシアが飛ばすジェット推進型のシャヘドは、時速400キロを超えて飛ぶ。それを追いかけて落とすのが、ウクライナの迎撃用のドローンだ。追う側が161キロで通信を失えば、追えない。ゼレンスキー氏は17日、「スターリンクを失い、迎撃機も失う」と話した。ウクライナが求めている上限は、時速450キロだ。

警報が5分前に届いても、追う側が161キロで止まるなら間に合わない。現場が言っているのは、そういうことだ。

ネットの評判

声が集まっているのはXだ。米政府とスペースXのどちらに責任があるのかをめぐって、投稿が続いている。共和党のティリス上院議員は「よくても、許されない間違いか手落ちだ。悪くすれば、ロシアの攻撃のために道を開けた意図的な判断だ」と書いた。ウクライナのフェドロフ氏は、スターシールドの速度制限を完全になくすことが「きわめて重要だ」と投稿した。活動家のステルネンコ氏は、部隊によっては時速60〜70キロで切れていると伝えた。一方で米政府側は、証拠のないままウクライナがアメリカを名指ししていると受け止めている。ベッセント財務長官が「無責任だ」と言ったのは、その立場からだ。意図的にやったのか、ただの不具合なのか。意見が分かれているのは、そこだ。

ルビオ国務長官は18日、ウクライナについて「今の時点では、彼らはそれを使えていない。そこは協議中だ」と話した。速度の制限で切れていたのは、その使えていないはずの回線だった。

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