頭から脚が出ているのは、
見たことがない
――獣医を20年してきた人が
写真はイメージ Photo by Jordan Self on Unsplash
オーストラリアで頭から脚が生えた子牛 見た目では原因が決められない理由
オーストラリアのクイーンズランド州南部で、頭から脚が2本生えた子牛が生まれた。もともとの4本と合わせて6本に見えるので、「Spider」と呼ばれた。生後1週間余りのころ、獣医のMegan Smithが動物看護師と麻酔をかけ、90分以上かけてこの2本を切り落とした。縫ったのは28針。オーストラリア放送協会(ABC)が10月10日に伝えた。
Smithはピッツワースの獣医で、この仕事を20年してきた。「このように頭から脚が出ているのは見たことがない」と話した(英語を訳した)。
なぜ、切る必要があったのか。脚を付けたまま体が大きくなると、頭が気持ち悪くなったり、体のつり合いが崩れたりするおそれがあった。名前を出していない飼い主は、生まれた姿を見て、一度は死なせることも考えていた。そこへSmithが、危ない手術だがほとんど費用はとらずに試す、と申し出た。
麻酔から目を覚ました子牛は、1時間後には哺乳瓶に口をつけた。いまは母牛のそばに戻り、乳を飲んで跳ね回っているという。
双子が、離れきらなかった
では、頭の脚はどこから来たのか。シドニー大学獣医学部のImke TammenがABCに挙げたのは、寄生性双胎だ。
受精卵が、双子になろうとして2つに分かれる。ところが、途中で分かれ方が止まる。片方の育ちはそこで終わり、消えずに残って、育ったほうの体にくっついたまま生まれてくる。残るのが脚だけ、という形もある。頭の2本もそれではないか、という見方だ。
同じ見た目でも、道筋は別
ここが、ややこしい。
Tammenは、双子ではなく1頭の体ができる途中でつまずいただけでも、脚が増えることがあると話した。さらに、親から受け継ぐ遺伝子の変異でも、同じことが起きる。
ABCは、Spiderにアンガスという品種の血が入っているように見えると書いた。そのアンガス種では、2013年に26番染色体の変異が見つかっている。DDと呼ばれる。潜性(劣性)の遺伝なので、変異を片方の親からだけもらった牛は、見た目は普通のままだ。登録されているアンガス種の15%以上が、この変異を持つという報告もある。両方の親からもらった牛でも、姿に出ないことがある。
逆の例もある。DDの変異を持っていないのに、同じように背中側に脚が増えた牛が、ニューサウスウェールズ州で1頭見つかっている。
その症例報告は、体の中で同じ仕組みが狂えば、原因が違っても同じ姿になりうると書いている。狂わせるのは、受け継いだ変異だけではない。毒物や、育ち始めのころの感染もある。
つまり、脚が2本多いという見た目だけでは、原因は決められない。たまたま起きたことなのか、受け継いだ変異なのか。分けるには、尾の毛や血、組織をとってDNAを調べる。オーストラリアでは、クイーンズランド大学の研究室などが検査を行っている。
Spiderが検査を受けたかどうかは、ABCの記事に書かれていない。Tammenは、正確な原因はおそらく分からないままだろうと話した。
足りないのは、件数
牛でこういう異常がどれくらい起きているのか。Tammenは、答えられるだけの材料がないと話した。だから、変わった生まれ方を見つけたら獣医に知らせてほしい、と農家に呼びかけた。1件ずつ集まれば、原因を調べられるからだ。
原因を見分けるDNA検査は、もうある。足りないのは、何件起きたかという数のほうだ。
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