老化って、止めるもの
だと思ってた
――見つかったのは「SIRPα」という分子
写真はイメージ 撮影 YVC Biology Department/CC BY 2.0(ウィキメディア・コモンズ)
群馬大が脳に見つけた「老化のブレーキ」 外したマウスは足腰が保たれた
群馬大学の大西浩史教授らの研究グループが、脳の老化を抑える「ブレーキ」を見つけたと発表した。脳の中にいる免疫の細胞ミクログリアが持つSIRPα(サープ・アルファ)という分子が、白質で起きる老化の反応を抑えていた。マウスを使った研究で、2026年10月14日、国際学術誌『Journal of Neuroinflammation』のオンライン版に載った。
老化の研究と聞くと、老けさせる原因を見つけた、という話を思い浮かべる人が多いだろう。今回は向きが反対だ。見つかったのは、ふだん老化の反応を抑えている側だった。
生後半年で、2歳のマウスとよく似た白質に
研究グループは、遺伝子を操作してSIRPαをなくしたマウスを調べた。すると生後約半年という若さでも、白質の状態が、約2歳のマウスとよく似た「老化モード」になっていた。発表では、この約2歳のマウスを「高齢マウス」と呼んでいる。
変化はミクログリアだけで止まらなかった。隣にいるアストロサイトという細胞にも広がり、白質の中でも特定の場所で特に強く出た。このマウスが高齢になると、自然な老化の変化の上に、さらにこの反応が上乗せされた。
ブレーキが外れた分だけ、老化モードが早く、強く出たことになる。言い換えると、ふだんは何かがそれを抑えていたわけだ。
足腰は、むしろ保たれていた
では、脳はぼろぼろになったのか。そうではなかった。高齢になっても、神経の線維を包む髄鞘が目立って減ることはなかった。運動機能は、同じ年齢の対照のマウスよりむしろ保たれていた。運動機能には白質の働きも一部関わる、と発表は書いている。
研究グループは、ブレーキが外れると白質は老化モードに傾くと書いている。ただ、髄鞘は減らず、運動機能は保たれていた。老化モードが「悪い状態」なのかは、この結果だけでは決まらない。
同じ分子を、がんの研究では外したい
SIRPαという分子は、今回の共同研究に加わった神戸大学で、前から調べられてきた。神戸大学は2017年1月13日、SIRPαとがん細胞のCD47という分子がくっつくと、免疫の細胞(マクロファージ)がその細胞を食べる働きが抑えられる、と発表している。だから抗SIRPα抗体でその結合を邪魔すると、免疫の細胞にがん細胞を食べさせられる。この2017年の発表に名前のある村田陽二准教授は、今回の論文の著者にも入っている。
がんでは、このブレーキを外したい。脳の白質では、外すと老化モードが早く来る。同じ分子でも、場所と目的で評価が反対になる。
今回の発表はマウスの研究で、人の白質で同じことが起きるかどうかには触れていない。研究グループが今後の課題として挙げたのは、この老化モードが脳を守る反応なのか、脳の機能低下につながるのかという問いだ。
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