薬が効きすぎて
血糖が下がりすぎるのが、怖い
――群馬大学の研究室が、そこを狙った
写真はイメージ 撮影 Roy Zuo/CC BY-SA 4.0(ウィキメディア・コモンズ)
血糖が高いときだけインスリンを増やすDPEU 群馬大が発見、まだ薬ではない
群馬大学生体調節研究所の松永耕一助教、白川純教授、泉哲郎名誉教授らが、理化学研究所などと組んで、DPEUという化合物を見つけた。この化合物は、血糖が高いときだけ、インスリンの分泌を強める。論文は10月21日、米国の学術誌 Cell Chemical Biology に出た。
先に言っておくと、これは薬ではない。人に使える段階ではなく、研究室で見つかった化合物の段階だ。
なぜ、高いときだけ効くのか
研究グループは、インスリンの分泌量を目印にして、大量の化合物を一気に試す探索をやった。そこで引っかかったのが、DPEUという小さな分子だった。マウス、ラット、ヒトからとった膵β細胞、どれにも効いたという。
変わっているのは、効く場所だ。DPEUは、細胞の中のミトコンドリアの外側の膜にあるVDACというタンパク質に、直接くっつく。そして、その働きを強める。VDACは、ミトコンドリアで作られたATPを細胞の中へ送り出す通り道だ。DPEUは、ブドウ糖の刺激でできたATPを、効率よくそこから流し出す。
では、なぜ血糖が高いときだけなのか。ATPは、ブドウ糖が来て初めて増える。出口を広げても、流れるものがなければ何も起きない、という筋道になる。
「高いときだけ」は、もう珍しくない
糖尿病情報センターのサイトでは、飲み薬をいくつかの型に分けて説明している。スルホニル尿素薬は、膵臓のβ細胞を刺激してインスリンを出させる薬で、主な副作用に低血糖と体重増加が挙がっている。一方、DPP-4阻害薬は、血糖が高いときにインスリンを出させるホルモンの働きを助ける薬だ。血糖を下げる力がブドウ糖の濃度によるので、この薬だけなら低血糖になる可能性は少ない、と書かれている。
つまり「血糖が高いときだけ働く」薬は、すでにある。そう考えると、DPEUの性質そのものは新しくない。「また分泌を増やす化合物の話か」と読むこともできる。
ただ、触る場所が違う。DPEUが結合するのは、細胞の中のミトコンドリアの外側の膜だ。群馬大学は、この成果を「VDACを介したミトコンドリアから細胞質へのATPの流れを調節する」新しい糖尿病治療の考え方だとしている。分泌の量を増やす話ではなく、どこを触れば必要なときだけ動くか、という話だとも読める。
分かっていないこと
発表には、書かれていないことが多い。生きた動物にDPEUを与えた試験の結果、安全性や毒性、効果がどれだけ続くのか、人に使う試験をいつ始めるのか。どれも、今回開けた出典では確かめられなかった。
いま確かなのは、マウスとラットとヒトの細胞で、血糖が高いときだけインスリンが増えた、ということだけだ。
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今からサイト、閉めます。
朝まで
――案内が出たのは、15時50分