うちの回線、時速160キロ以上は
対象外です

――SpaceXが、ウクライナ軍に

写真はイメージ Photo by Donald Giannatti on Unsplash

10/21 18:16 / 発信国:アメリカ / 記者:工藤

ウクライナのドローンが止まった速度制限、決めたのはマスク氏本人?

時速160キロを超えると、衛星の回線が切れる。10月14日の未明、ウクライナ軍の通信端末に、いきなりその制限がかかった。軍には何も知らされておらず、SpaceXの問い合わせ窓口に連絡して、初めて理由が分かったという。

10月20日、米CBSニュースが「決めたのはイーロン・マスク氏だ」と報じた。関係者の話として、マスク氏は命令に至るまでに米政権の当局者と何度も話し、大統領の考えをはっきりさせたがっていたという。自分の会社が、終わらない戦争で儲けていると見られるのを嫌がっていたとも書かれている。

本人が決めたのか。マスク氏自身はXにこう書いていた。「速度や利用のどんな制限も、米軍、そして最終的には大統領が決める」。止まったのはスターシールドで、持ち主は米政府だ、という理屈だ。

言い分が、きれいに食い違っている

トランプ大統領は「だれなのかは知らないが、知りたい」と話した。ヘグセス国防長官は「何も引っ込めていない。我々の側では何も変わっていない」。ルビオ国務長官は「ホワイトハウスのだれも、通信を遅くしろとは命じていない」と否定した。

野外に置かれた衛星通信のアンテナ
写真はイメージ Photo by Pranit Sonigra on Unsplash

ところが米軍事メディアのDefense Newsは16日、米政府の当局者2人と西側の当局者1人の話として、指示はホワイトハウスの内部から出たと報じた。英テレグラフは、マスク氏の側から大統領に持ちかけたという4人の関係者の話を伝えた。1人は「実際は、両方が関わっていた」と話している。

結局、いまはどうなのか。ルビオ氏は「復旧したと理解している」と話した。ただゼレンスキー大統領は、いまも時速161キロを超えると切れると説明している。元には戻っていない。

「非情だ」の大合唱の、すぐ外側

出典で目につくのは、批判の声のほうだ。ゼレンスキー大統領はこの制限を「大きな間違いだ」と呼び、ロシアのシャヘドを撃ち落とせなくなったと話した。大統領の技術顧問ベスクレストノフ氏は「我々の防衛部隊は、こんな制限の警告を受けていない。それで複数の作戦が失敗した。これが偶然であるはずがない」と書いた。

地球をまわる通信衛星のイメージ
写真はイメージ Photo by Mara F on Unsplash

その外側に、別の見方がある。制限そのものには理屈がある、という側だ。

もとは、マスク氏が前から繰り返している線引きだ。「スターリンクは民間のサービスだ。使えるのは民生か防衛の用途で、攻撃のための軍事行動には使えない。民間企業がそれをやるのは、ふさわしくないからだ」。ルビオ氏は今回、ウクライナがロシアの奥深くを攻撃するためにスターシールドを使いたいと求めてきたと明かした。いまは使えない。「話し合っている最中だ」。

この線引きは、法律の面でも空論ではない。米陸軍士官学校のリーバー研究所は2022年の分析で、スターリンクの衛星が国際人道法でいう軍事目標に当たると結論づけた。ロシアも同じ年、国連の場で「民間に近いインフラも報復の標的になりうる」と言っている。民生用の回線で攻撃をすれば、同じ回線を使う病院や家庭まで標的の側に引き寄せられる。民間企業が線を引きたがるのは、ここだという読み方になる。

ネットの評判

Xでは、政治家の投稿が反応を引っ張った。ポーランドのシコルスキ外相はマスク氏に向けて「おいイーロン・マスク、大物さん、また自分の製品で政治をやっているのか」「ヨーロッパの客として、我々は見ているぞ」と書き込んだ。ウクライナの議員からも、兵士の命と国の守りを危なくする行為だという声が出ている。

一方、制限の側を擁護する言葉として出典で確かめられたのは、マスク氏本人の説明と、米政権の「命じていない」という否定が中心だった。投稿の数や賛否の割合は、出典に書かれていない。

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