どうも名前が気に食わないから、この人に部屋貸すのやめよう。
――スペインの大家さんが言ってた
名前だけ変えた3,500通、スペインで返事は54%と37%に割れた
スペインの国立の研究機関が、賃貸の広告に3,500通を超える問い合わせを送った。全部、架空の名前で出したものだ。物件も文面もそろえて、変えたのは応募者の名前だけ。スペイン系の名前だと54%で前向きな返事が来て、北アフリカや中東、パキスタンに多い名前(研究ではMENAPと呼ぶ)だと37%だった。
送ったのは、CSICの人口学の研究所だ。EUのお金が入ったEqualStrengthという研究計画の一部で、2025年から2026年にかけて送った。10月15日のelDiario.esの朝刊に、研究者のÁlvaro Suárez Vergne、Isabel Lázaro、Héctor Cebolla Boadoの3人が、自分たちで結果を書いて出している。
日本に置き換えてみる。同じマンションの同じ部屋に、同じ文面のメールが2通届く。違うのは差出人の名前だけ。片方には内見の案内が来て、片方には返事が来ない。あくまでたとえ話だが、スペインの広告で起きていたのは、これに近いことだった。
変えたのは名前だけ、という作り
用意した名前は4種類ある。スペインで多い名前(物件が出ている地域に合わせて、カスティーリャ語かカタルーニャ語)、MENAPの国々に多い名前、サハラ以南のアフリカに多い名前、そしてスペインのロマ(ジプシー)に多い名前だ。
なぜ名前だけを変えるのか。これはコレスポンデンス・テストという調べ方で、ほかの条件をそろえておけば、差が出た理由を名前に絞れる。スペインでは前から使われていて、バルセロナ市が2020年に出した調査でも、スペイン系の姓は56.6%、アラブ系の姓は37.8%で返事が来ていた。
では、3,500通は何を測れたのか
測れたのは、入口の一回目だけだ。問い合わせに返事が来るか、話が次に進むか。家賃がいくらになったか、最後に契約まで行けたかは、この数字に入っていない。
ただ、入口だけ、というのがここでは効いている。スペインの家賃は2015年から平均で40%上がった。部屋を借りている人のおよそ4分の1、300万人ほどが、月の収入の3割以上を家賃に払っている。だれにとっても借りにくい。
その「借りにくさ」を、この実験は差の外に出した。同じ部屋、同じ文面。足りないものは、どちらの名前にも同じだけ足りない。それでも17ポイント開くなら、残る違いは名前しかない。
研究者たちは、賃貸の市場が二つに分かれていると書いた。すんなり中に入れて、あとは家賃で競うだけの人たち。その前に、まず借りていいと認めてもらわないといけない人たち。スペイン系の名前でも、46%は前向きな返事をもらえていない。だれもが苦しい市場で、片方の人たちだけ、手前に線が一本ある。
書類を足しても、差は縮まなかった
では、なぜ大家は名前で選ぶのか。そこは、この実験では測れない。相手の頭の中は見えないからだ。
手がかりになる研究はある。マドリードの大家1,600人にWhatsAppで問い合わせを送った別の実験(学術誌Social Forces、2025年)では、中国系の名前の人に返事が来る割合が、スペイン系より1割ほど低かった。返事の差が4割ほど縮んだのは、応募者の収入などの情報を添えたときではなく、姓を中国系のままにして、下の名前をスペイン系に変えたときだった。
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