給料が上がるなら、黙っていられる?
- ドイツ東部の町で、住民が「ずっと旧西独の政治家に見下されてきた」と取材に答えました。給料は、旧西独地域の8割まで追いつきました。それでも、政治や経済のトップの座に就く旧東ドイツ出身者の割合は12.1%で、調査が始まって以来、12%台を超えたことがありません。
- 「見下されても、手取りが増えればいい」
- 「給料で黙らせるのが、いちばん失礼だ」
どっちの味方?最初の印象で選んでください。
あなたが味方した 給料が上がればいい派 の言い分
レジの前で、おにぎりをひとつ棚に戻すかどうか迷う朝があります。その迷いがなくなるなら、私は会議に呼ばれなくてかまいません。手取りが増えた月は、子どもに夏の講習を受けさせられます。足りない月は、あきらめてもらうしかありません。会議で誰が意見を言ったかは、子どもの夏には関係しません。
父は工場で働いていて、うちは決める側じゃない、といつも言っていました。その言い方が嫌で、私は若いころ、現場の意見を通そうとして上の人と散々ぶつかりました。何年かやって分かったのは、席を増やしても給料は増えないということです。会議室の椅子はひとつ増えましたが、給料明細の数字は変わりませんでした。
本音を言えば、決める場に入りたいと言う人を見ていると、まだ余裕があるんだなと思います。腹が満ちている人だけが、尊重という言葉を使えます。私は見下されるのに慣れました。慣れた代わりに、家賃を払えなかった月はありません。見下して構いません。そのぶん払ってくれるなら、頭はいくらでも下げます。
あなたが味方した 決める場に入りたい派 の言い分
会議の決定をあとからメールで知らされるとき、胃のあたりが冷たくなります。決まった中身に文句はありません。ただ、自分の仕事のやり方を、自分がいない部屋で決められたという事実だけが残ります。給料は上がりました。それでも、朝の挨拶のとき、相手の目がこちらを通り過ぎていくのは分かります。
母は地方の店で長く働いて、本社から来た人に、そういう決まりなので、と言われ続けていました。帰ってきた母が台所で黙ってお茶を飲む、その背中を覚えています。あれを見て育ったので、黙ってお金を受け取る大人にはなりたくないと決めました。だから私は、呼ばれていない打ち合わせにも資料を持って行きます。煙たがられている自覚はあります。
本音では、給料でいいと言い切れる人がうらやましいです。あきらめ方を知っている人は、たぶん私より眠れています。でも、決める場にいない人の給料は、決める場にいる人がいつでも下げられます。上げてもらった人は、下げられる人です。だから私は、金額の話をする前に、名前を呼んでもらう話をしています。
どちらにも数えられない立場 町を出た人
話題になるのは、残って怒っている人と、残って我慢している人のことばかりです。私は出て行きました。出た先では誰も事情を聞かないので、黙っています。人が減った話は数字で語られますが、減った人それぞれに、出た日の朝がありました。
理由を聞いた今、もう一度選ぶ
言い分は、世間の声をもとに編集部が脚色したものです。実際の発言と出典は、元ネタの記事にあります。
元ネタを読む →ドイツ東部の「2級市民」 AfDが39%取った町の不満は、移民だけじゃない