本番前、目標は高く?低く?
- 熱が39度まで上がった8日後に、17歳の選手が世界記録を出しました。名古屋アジア大会の競泳男子200メートル平泳ぎ決勝で、大橋信が2分04秒83で優勝しています。本人はレースの前、自分を安心させるために2分05秒台が出せればいいと思っていた、と話しています。
- 「高く言わないと、体は動かない」
- 「安心した日のほうが、速い」
どっちの味方?最初の印象で選んでください。
あなたが味方した 高く言う派 の言い分
テストの前でも、仕事の締め切りの前でも、私はまず一番高いところを口に出します。「今回は満点を取る」「この案で一位を取る」と、先に言ってしまう。言ってしまえば、もう逃げ道がありません。朝起きた瞬間から、昨日の自分より一手多く動くようになります。
高校のころ、模試の前に「このくらいでいいかな」と自分で線を引いた年がありました。結果は、その線のちょうど下でした。悔しいより先に納得してしまったことが、今でも怖いんです。自分で引いた線は、天井になります。上を見なくて済むし、届かなくても「最初からそのつもりだった」で終われる。あの終わらせ方を一度覚えると、人は何度でも使います。だから私は、言うことにしました。宣言して届かず、黙って帰る夜もあります。それでも、線を下げていたころの自分より、ずっと遠くまで来ました。
本音を言うと、「気楽にいこう」と笑っている人が少し羨ましい。あの顔のまま結果を出す人がいるのも知っています。でもあの言葉は、だめだった日の保険に聞こえてしまうんです。私は保険をかけずに、毎回一番高いところを言いたい。
あなたが味方した 低く見積もる派 の言い分
本番の朝、私は自分に「これだけできたら上出来」と、一番低い線を言い聞かせます。面接なら、名前と志望理由をちゃんと言えたら合格。発表なら、最後のページまでたどり着けたら合格。そこまで下げてから部屋に入ると、肩の力が抜けて、声が普通に出ます。普通に出た声のほうが、だいたいうまくいきます。
昔は逆でした。前の晩に「完璧にやる」と決めて、当日は朝からお腹が痛くて、紙を持つ手が震えて、覚えていたはずの言葉が飛びました。あれは準備が足りなかったからではありません。高い線を自分に突きつけたまま本番に立つと、体が先に固まるんです。熱が下がっても気持ちだけ戻ってこない日があるのと同じで、心は理屈では動いてくれません。だから私は、心が動ける高さまで線を下げます。下げた線を越えた日には、おまけが付いてきます。
宣言して自分を追い込む人を、立派だとは思います。ただ、あの人たちが本番で固まっているところを、私は何度も見てきました。声に出した目標の高さより、当日どれだけ落ち着いていられるか。そっちで決まる場面のほうが、ずっと多いと思っています。
どちらにも数えられない立場 目標を決めない人
高いとも低いとも言いません。今日やることだけ決めて、終わったら寝ます。目標を口にした日から、人は結果を数え始めてしまう。数えないほうが続くんです。そして、続けた人が最後に残っていました。
理由を聞いた今、もう一度選ぶ
言い分は、世間の声をもとに編集部が脚色したものです。実際の発言と出典は、元ネタの記事にあります。
元ネタを読む →39度の熱の8日後、17歳・大橋信が世界記録達成