何発届くかは、
言えません

――ある国の政府が、冬を前に

10/17 05:00 / 発信国:英国 / 記者:工藤

英国、ウクライナにストーム・シャドウ追加 何発かは言わない

10月14日、ウクライナのゼレンスキー大統領がロンドンを訪れ、英国のアンディ・バーナム首相と会った。その翌日、英国がウクライナに長距離の巡航ミサイル「ストーム・シャドウ」を追加で送る、とブルームバーグが報じた。冬が来る前に、ウクライナの発電所や市民を攻撃するロシア側の動きを、元から叩けるようにするのが狙いだという。

ただ、どの記事を読んでも、肝心の数字が出てこない。何発送るのか。いつ着くのか。英政府はどちらも明かしていない。そもそも、この供与は公式に発表されたものではない。

何発かは言わないが、何を壊せるかは分かっている

ストーム・シャドウを作っているのは、欧州のミサイルメーカーMBDAだ。射程は250キロを超える。レーダーに映りにくいよう、低いところを速く飛ぶ。弾頭は450キロで、壁を突き抜けてから中で爆発する造り。建物を外から崩すのではなく、中の設備を壊す兵器だ。

実際にどう使われたかは、公開されている。2026年3月10日、ウクライナ軍はロシア西部ブリャンスクの半導体工場「クレムニー・エル」に、Su-24爆撃機から7発を撃ち込んだ。イスカンデルなどロシアのミサイルに入る電子部品を作っていた工場だ。衛星写真では、主要な建屋に少なくとも5か所の着弾。約1,400平方メートルが焼けた。分析する人の多くは、事実上使えなくなったと見ている。

ゼレンスキー氏はこの攻撃を「侵略者への、まったく正当な反撃だ」(訳)と話した。ロシア側は「テロ」だと非難し、市民6人が死亡、37人以上が負傷したと発表している。

「冬を守る」のに、街の上空は守らない

ここが、ややこしい。ストーム・シャドウは、飛んでくるミサイルやドローンを撃ち落とす兵器ではない。数百キロ先の工場や基地を壊す兵器だ。だから「冬の前に街を守る」といっても、守り方はかなり遠回りになる。ロシアが撃つ前に、撃つための工場のほうを減らす、という考え方だ。

英政府の立場ははっきりしている。市民やエネルギー施設への攻撃に関わっているロシアの軍事施設を叩くのは、防衛にあたる。ロシアがやめない間は、ウクライナがやめる必要もない。一方のワシントンは、ロシアの製油所へのドローン攻撃を控えるようウクライナに促していると報じられている。ロンドンとは向きが違う。

公表されたのは、ミサイルの数ではなかった

では、結局いくつなのか。この話に出てきた数字を並べると、妙なことに気づく。射程250キロ。弾頭450キロ。ブリャンスクに7発。焼けた面積1,400平方メートル。どれも公になっている。テレグラフによれば、英国は去年の秋にも同じように補充している。それも分かっている。

分からないのは、今回の数だけだ。軍事上の理由で伏せるのは、珍しいことではない。ただ、数が出ないと、外から見る側には「冬に間に合う量なのか」を確かめるすべがない。

英国の手元に余裕があるわけでもない。ストーム・シャドウの生産ラインは、15年ほど止まっていた。MBDAの英スティーブニッジ工場でそれが動き出したのは2025年7月のことだ。公表されたのは、ウクライナへ送るミサイルの数ではなく、生産ラインに戻った300人超という数のほうだった。

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