うちで凍らせた金だ。
うちが決める

――ある国の首相が、同盟国に

写真はイメージ Photo by Alex Duffy on Unsplash

10/16 17:27 / 発信国:米国 / 記者:工藤

米国「ロシア資産の凍結を一部解こう」 欧州はその場で断った

アメリカが、ロシアの資産の凍結を一部解除しよう、とヨーロッパに持ちかけた。英紙フィナンシャル・タイムズが10月14日に報じ、ロイターなどが伝えた。協議は10月9日にマイアミであり、米側のスティーブ・ウィトコフ氏とジャレッド・クシュナー氏が案を出した。

案の中身は、凍結を解いたうえで、ワシントンが監督する新しい受け皿にその資産を移す、というもの。狙いは、止まっているウクライナの和平協議を動かすことだ。ウクライナ、フランス、ドイツ、イギリス、EU、NATOの担当者が同席し、欧州側はその場で断った。金額も、どの資産が対象かも、公表されていない。

「凍結」は、持ち主がロシアのままという意味

まず、いまは何が起きている状態なのか。ロシアが2022年にウクライナへ侵攻したあと、西側はロシア中央銀行の外貨準備、約2,600億ユーロを凍結した。大半はヨーロッパにあり、ベルギーのユーロクリアに置かれている。ロイターは、ヨーロッパでの凍結分は2,100億ユーロで、うち約1,850億ユーロがユーロクリアにあるとしている。

ユーロの紙幣と硬貨
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ここが、ややこしい。凍結は、持ち主を変える手続きではない。動かせなくしているだけで、資産そのものはロシア中央銀行のものだ。持ち主を変えるのが没収で、こちらはまだ、どの国もやっていない。

4年かけて使えたのは、利息の分だけ

では、ウクライナ支援に回っているというお金は何なのか。預けられているのは国債などで、満期が来れば現金になり、利息や運用の益が出る。この利益はロシアのものではない、という整理で、2024年からウクライナ支援に回されている。

ブリュッセルに並ぶEUの旗
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G7は2024年10月、この利益で返す形の500億ドルの融資を決めた。元本には触らず、利息の流れだけをあてにする仕組みだ。

元本の没収に進まないのは、主権免除の壁があるため。EUは、そのまま没収することはできない、という結論を出している。

その中間として出たのが賠償ローンだった。規模は1,400億ユーロ。ただ、ロシアに訴えられたときに矢面に立つベルギーが反対し、まとまらなかった。2025年12月19日、EUは結局、自分たちで借金をしてウクライナに900億ユーロを貸すことを決めている。

欧州がいちばん触らなかった部分

並べると、こうなる。凍結は、持ち主はそのまま。収益の利用は、利息だけ。没収は、持ち主を変える手続きで、法律の壁があってできていない。ヨーロッパがこの4年で踏み込んだのは、2番目までだった。

米国の案は、その先にある元本を動かす話になる。ドイツのメルツ首相は、EU首脳会議を前にブリュッセルでこう話した(訳)。「あれはヨーロッパで凍結された資産だ。ヨーロッパで凍結されたままであるべきだ。これは我々の問題で、我々が決める」

では、だれがリスクを負っているのか。ユーロクリアだ。モスクワの裁判所は2026年5月15日、ロシア中央銀行の訴えを認め、ユーロクリアに18兆1,700億ルーブル(約2,000億ユーロ)の支払いを命じた。ユーロクリア側の代理人は、非公開の審理で「公正な裁判を受ける権利が明らかに侵された」と話し、不服を申し立てる意向を示した。ロシアの裁判所の判断が、そのままEUで執行されるわけではない。

ネットの評判

海外の掲示板Reddit(レディット)では、この報道への受け止めが割れている。経済の板に立った投稿は、1,055点の支持と305件のコメントを集めた。止まった交渉を動かす呼び水として使えるという声と、侵攻したほうが得をする形になるという反対が並んだ。ウクライナ情勢の板でも、制裁を緩めることへの賛否が分かれている。

ヨーロッパがこの4年でウクライナに回したのは、資産が生んだ利息の分だけだ。元本は、いまも凍結されたまま動いていない。

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