これ、どこで
手に入れた?
――ある兵士が、町の住民に
ウクライナ占領下の町へ、爆撃ドローンが運んだ4トンの食料
ある川沿いの町で、店が全部閉まったとする。橋は落ちていて、残った道には地雷が埋まっている。だから買い物は、夜中に空から降ってくる。プロペラが6つ付いた大きなドローンが、小麦粉や缶詰の入った箱を川の向こうから運んでくる。
舞台はウクライナ、ドニプロ川の向こう岸
日本の話ではない。起きているのは、ウクライナ南部ヘルソン州のオレシキという町だ。
9月27日の夜、ウクライナ側はドローンで約4トンの食料をこの町へ運んだ。あらかじめ決めた約100カ所へ同時に落とした。10月4日未明には2回目。約400個の包みで、ほぼ4トン。中身は食料、薬、子ども向けのセットだった。運んだのは国家親衛隊の第11旅団と第34ヘルソン連隊で、海兵隊や国境警備の部隊も加わった。
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なぜ空から運ぶのか。町は川の左岸にあり、陸の道はロシア側がふさいでいる。外相のアンドリー・シビハは「オレシキに届く一つ一つの包みに、ウクライナは自国の人々を忘れないというメッセージがある」と書いた。
日本の宅配ドローンは1キロ、こっちは19キロ
使った機体は「ヴァンパイア」。ウクライナのスカイフォール社が作る大型のヘキサコプターで、もともとは夜に爆弾を落とすための機体だ。ロシア側は「バーバ・ヤガー」と呼ぶ。
その爆撃機が、いまは食料を落としている。1回に積むのは約19キロだ。
ここで日本の話を1つ。ANAグループは2023年11月、沖縄県久米島町でドローン配送の実証をした。スーパーの食品を、約2.3キロの経路で住民に届けた。人のいる場所の上を飛ばすレベル4飛行で、機体に積めたのは1.0キロだった。
技術の系統は、そう遠くない。違うのは重さと距離だ。オレシキへ向かう機体は、ドニプロ川の上を10キロ以上越えていく。1回19キロで4トンを運ぶなら、往復は何百回にもなる。
届いた箱が、受け取った人を危なくする
では、食料はちゃんと住民の手に渡ったのか。ここが、いちばん苦しいところだ。
オレシキ市軍政当局のタチアナ・ハサネンコによると、包みを受け取れた住民と、受け取れなかった住民がいる。ロシア側が一部を持っていった。ロシア製でない食品を見つけると、兵士はその場で聞くという。「これ、どこで手に入れた?」。そしてウクライナ軍への協力を疑う。ヘルソン州のプロクディン知事は、包みを受け取った住民を占領側が拘束し、「地下室に」放り込んで殴っていると話した。
戦争前は2万4000人だった町に、いま残るのは約1700人、うち子どもが47人。ロイターによると、約2000人とする発表もある。電気とガスは、2023年にカホフカ・ダムが壊れてから来ていない。水道もない。病院には電気も水も薬もなく、元職員の高齢者4人が止血くらいしかできない。
ロイターは、この投下を自分では確かめられなかったとしている。取材した住民には「何も見ていない」と話した人もいた。一方、メデューサが伝えた住民のメッセージには「みんな、本当に本当にありがとう」というものもあった。
住民は、自分で町を出ることもできない。ウクライナ側は避難を呼びかけているが、ロシア側は受け入れていない。9月30日には、町を出ようとした4人が地雷を踏んでけがをし、別の場所では木の実を採っていた男性が地雷で亡くなった。
10月4日のドローンには、帰り便もあった。町の外へ運び出せたのは、飼い主のいなくなった猫6匹だ。
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