『いま、どこ?』の返事が、
嘘だった
――ある工場が、着かないトラックの運転手に
写真はイメージ Photo by Avinash Kumar on Unsplash
小麦108トンが消えた南アフリカ、追うのは警察ではない
港に着いた小麦を、同じ州の内陸にある製粉工場まで運ぶ。大型トラック3台、合わせて108トン。夜のうちに港を出た。朝になって、工場から運転手に電話が入る。いま、どこですか。運転手は場所を答えた。だが、その場所にトラックはいなかった。それきり、電話もメッセージも返ってこなくなった。
これは日本の話ではない。南アフリカで起きた
舞台は南アフリカだ。2026年10月3日の未明、ダーバン港を出た3台のトラックが、約76キロ離れたピーターマリッツバーグの工場に着かなかった。地元紙ウィットネスなどが10月6日に伝えた。
積んでいたのは小麦108トン。イヴェコ、MAN、デーウーの3台が、それぞれ36トンほどを運んでいた。金額にして約60万ランド、日本円で580万円ほどだ。
ダーバン港が1年に扱う貨物は、最大3,140万トン。消えた108トンは、この港が2分ほどで動かす量にすぎない。
運転手は3人いた。誤った位置を伝えたあと、メッセージにも電話にも応じなくなった。3人のうち2人は、その会社で配送するのが初めてだったという。
なぜ消えたのか。調べている側は、すでに3人を容疑者として特定している。外国籍が1人、南アフリカ国籍が2人。映像、写真、身元の情報、車両の登録番号まで持っているが、公開の許可を待っている段階だという。小麦の行き先は、まだ分かっていない。なぜ運ぶはずのものを持ち去ったのか、その理由は出典では確かめられなかった。
追っているのは、警察ではない
ここが、日本と大きく違う。この件を調べ、情報提供を呼びかけているのはRUSA(リアクション・ユニット・サウスアフリカ)。南アフリカの警察ではない。クワズール・ナタール州を拠点にする民間の警備会社で、武装しての緊急出動や警備、救急を請け負っている。発表したのは、この会社のプレム・バルラム氏だ。
南アフリカでは、トラックが積荷ごと消えるのが珍しくない。南アフリカ警察の統計では、2025年10〜12月の3か月に、ハイジャックされたトラックが349台あった。前年の同じ3か月は413台。64台、15.5%減っている。
減ったのだから、よくなっているのか。道路貨物協会のギャビン・ケリー氏は、この数字をそのまま受け取るなと話した。「統計は届け出に頼っている」。そのうえで「もう事件を届け出ない業者がたくさんいる。実際に動いてもらえるという期待を捨ててしまった」と言った。警察が役割をこなせるという信頼を、業界は長いあいだ失ってきた、とも話した。
狙われる積荷の筆頭は、食品と飲料、酒だ。保険仲介のエーオン南アフリカがまとめている。小麦が消えたのは、南アフリカでは意外な話ではない。
日本では、1年で944件
では、日本はどうか。警察庁の統計をまとめたNX総合研究所によると、2024年に盗まれた貨物自動車は944件だった。1日あたり2.5件ほどになる。
数だけなら日本のほうが多い。だが、中身が違う。日本の944件は、車庫や路上に止まっているトラックが盗まれたものが中心だ。南アフリカの349台は、運転手が乗って走っているところを襲われたものだ。
日本で貨物自動車が1年に944件盗まれるあいだ、南アフリカでは走行中のトラックが3か月で349台奪われている。
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- Three trucks carrying R600 000 worth of wheat disappear en route to PMB
- Police appeal for information after R600 000 wheat theft
- Hijackings may be higher than SAPS data – RFA
- SA's Cargo Risks and Hijacking Surge(エーオン南アフリカ)
- Reaction Unit South Africa 公式サイト
- Port of Durban - Wikipedia
- N3 (South Africa) - Wikipedia
- 貨物自動車の基本的盗難防止対策~減少しても年間1,000件近い盗難が発生~(NX総合研究所)
- 南アフリカ・ランド/円の為替レートの推移(世界経済のネタ帳、IMFデータ)