こういう格好の人、
ほんと嫌い

――Xに投稿された1枚のAI画像

10/19 10:13 / 発信国:日本 / 記者:工藤

「イオンモールおじさん」叩きの裏で、409人が選んだ1位は「好きな服」

2026年6月7日、Xに1枚のAI画像が投稿された。青色のシャツに、ベージュのチノパン。縦長のボディーバッグを斜めに掛けて、足元はスニーカー。添えられていた一文は「地方の田舎のイオンモールでよく見かけるこういう格好の人、ほんと嫌い」だった。

これ、自分も持っている服じゃないか?

画像は「イオンモールおじさん」として広まり、言い争いは4か月続いた。そして10月18日、京都新聞が答え合わせのような記事を出した。50代以上の男性409人に、服の選び方を聞いたアンケートだ。

409人が選んだ1位は「自分が好きと思う服」

調査は、京都新聞の双方向型報道「読者に応える」に登録している男性が答えたものだ。409人のうち、60代が33%、70代が32%、50代が27%だった。

たたまれたシャツが並ぶ店の棚
写真はイメージ Photo by Fujiphilm on Unsplash

ファッションに関心が「ある」は73%。思ったより多い。

では、何を参考にしているのか。いくつでも選べる設問で、一番多かったのは「他人に左右されず、自分が好きと思う服を着る」で236人。2位は「普段の暮らしに合わせる」で120人。「SNSなどメディア」は7番目だった。

重視する点も、1位は「清潔感」、2位は「動きやすさや着心地」。「流行」はここでも7番目。よく買うブランドは、ユニクロと無印良品が圧倒的に多く、ワークマン、モンベル、アディダス、しまむらが続いた。あの服装は、流行を外した結果ではなく、流行をはじめから見ていない結果らしい。

「汚れてもいい、動きやすい、洗濯しやすい、安い」

笑われた側から、はっきり言い返した人もいる。実業家の黒坂岳央さんは6月10日、自分のnoteにこう書いた。子連れでイオンモールを歩く日の服に求める条件は「汚れてもいい、動きやすい、洗濯しやすい、安いの4点だ」。

公園の砂場
写真はイメージ Photo by Markus Spiske on Unsplash

子どもにジュースをこぼされる。公園に行けば砂がつく。だから「子供としっかりと付き合うパパほど、ブランド物なんて着ることはできず、どうしても格好はダサくなる」のだという。黒坂さんは44歳、2人の子の父。集英社オンラインの取材には「公園や砂場に行くと泥だらけになりますし、おしゃれな服は無理ですね」と話し、こうも言っている。「ダサくなった方が、むしろ変なことをしに行かなくて済むので、成功なのかなとすら思います」。noteの結びはもっと強い。「笑っている側が、まだ持っていないものを彼らが持っているだけだ」。

もちろん、反対の声もある。集英社オンラインでは、28歳のコラムニスト妹尾ユウカさんが、この服装の男性を「浮気しなそうだけど成功者は少なそう」と評した。「協調性を極めて生きているはずなんで、すごい成功者はあんまりいない気がします」。ネットメディアのアゴラでは、金尾泰之さんが黒坂さんの4点に反論し、「実用性と最低限・教科書的な見栄えは両立する」と書いた。GUやファミリーマートの衣料品を挙げて、直すのは難しくないという。問題は結果のダサさではなく、直すのを拒む「姿勢」だという主張だ。

アンケートにも、開き直りに近い声は並んでいた。「加齢とともに『年相応の服装』への反抗心が高まっています」(京都市北区、60代)。「80年代の自分をそのまま」(京都市西京区、60代)。一方で「老けてみられないように」(南丹市、70代)という悩みもある。

では、なぜ服を買い替えないのか。ここは声がそろっていた。「値段が年々上がって大変」(京都市中京区、50代)。「おしゃれもしてみたいが、金銭的な余裕がない」(宇治市、60代)。「最近の服はペラペラで安っぽいのが多くなった。品質の良い生地が少ない」(京都市伏見区、70代)。神戸大学の平芳裕子教授(ファッション文化論)は、この世代には「男性はおしゃれに無頓着がかっこいい」という古い価値観が働いていると指摘している。

ネットの評判

Xでは、最初の投稿そのものへの反発が大きかった。黒坂さんは、投稿を支持する声もあったが多くは反発を呼んだと書いている。批判の中には「他人を盗撮してSNSでインプ稼ぎをするな」という声があったという。あるnoteの投稿は、同じ服装を「清潔感があり、休日の良きお父さん」と評価し、否定する理由が分からないと書いていた。一方で、無個性で本人が選んでいないように見える、という見方も残っている。

そして、ややこしいことが一つ。黒坂さんが6月11日にアゴラへ書いた文章では、この騒ぎは「中年男性を無断撮影し」た投稿として説明されている。画像がAIで作られたものだという指摘は、そのコメント欄で付いた。

4か月のあいだ笑われ、擁護され、分析されたあの男性は、はじめから実在しない。

二択の設問:休日の服、楽な方でいい?休日の服、楽な方でいい?この話、あなたはどっち? →
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