投票1位の案は、採用されなかった
東京都シンボルマークの選考(1989年)
写真はイメージ Photo by sq lim on Unsplash
東京都のあの緑のマーク、採用は一般投票5位の案だった
東京都の、あの緑のマーク。三つの弧が開いた形だ。イチョウの葉だと思っている人は多いだろう。だが1989年の選考では、はがきの一般投票で1位になった案が採用されていない。通ったのは、得票順位5位の案だった。
この話が出てきたのは、2026年10月9日のデイリーポータルZの記事だ。書いたのは西村まさゆき氏。国分寺市の東京都公文書館に、落選した案の資料が残っていた。
経緯はこうだ。マークを作ったのは、旧東京市ができて100年になるのを記念してのことだった。1988年8月10日、デザイナーの河野鷹思を委員長とする選考委員会ができる。集め方は指名コンペで、デザイナー10名と2社に提出を求めた。11月21日に候補20点を公表。1989年の年始から、はがきで一般投票をした。結果の発表は2月。そして3月22日、採用が決まったのは5位の案だ。
いちばん票を集めたのは、イチョウの葉に見える12番だった。落ちた。通ったのは18番で、デザインしたのはデザイン会社XICOの代表、レイ吉村氏。それが、いま私たちが見ているあのマークである。
なぜ1位ではなく、5位なのか。
イチョウに見えて、イチョウではない
選考委員会の副委員長は、キッコーマンのしょうゆ卓上びんをデザインした榮久庵憲司だった。選んだ理由を、こう話している。決め手は、シンプルでだれでも書けて、応用がしやすい点。そして「イチョウのようで、イチョウではない」、その曖昧さもポイントだった。
はっきりイチョウに見える案より、イチョウに見えるけれど言い切れない案が選ばれた、ということらしい。では、投票は何だったのか。投票の結果をどう扱うと決めていたのかは、出典では分からなかった。
都の告示(1989年6月1日、第577号)も、同じことを言っている。マークは、東京のアルファベットの頭文字Tを「中央に秘め」、「三つの同じ円弧」で構成したもの、と書いてある。秘めている、と都が自分で書いているのだ。
秘めた結果が、これである。37年たっても、多くの人はイチョウだと思っている。都の木がイチョウなのだから、無理もない。その都の木は1966年11月14日に決まったもので、都民投票でイチョウが7,919票、49%を集めて選ばれている。
都民が投票でイチョウを選んだのは、木のほうだけだった。
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