亡くなった歌手の新曲、歌声はAIが作った

故・尾崎紀世彦さん/2026年10月7日の記念ライブ

写真はイメージ Photo by Ladislav Bona on Unsplash

10/8 17:38 / 発信国:日本

故・尾崎紀世彦さんの新曲、AIの歌声で披露 遺族は承諾、ネットでは疑問の声

2026年10月7日、東京・渋谷のライブハウスLa.mamaで、歌手・尾崎紀世彦さんの新曲「素晴らしい、この世界は」が初めて流れた。尾崎さんは2012年に69歳で亡くなっている。歌声は、AIで作ったものだ。宣伝用の映像もAIで作った。スポニチアネックス、サンケイスポーツ、デイリースポーツが、それぞれ10月7日に報じた。

なぜ、いまAIなのか。今年は、大ヒット曲「また逢う日まで」の発売から55年になる。企画したのは、尾崎さんの元スタッフたちだ。音楽プロデューサーの小林輝氏(67)が、元マネジャーの柴田正氏(72)らに持ちかけた。サンケイスポーツによると、AIで歌声を復活させた美空ひばりの例が、背中を押したという。

ライブは、若手の歌手7人が尾崎さんの曲を歌い継ぐ形だった。最後は出演者とファンで「また逢う日まで」を大合唱した(スポニチアネックス、10月7日)。

遺族は、何と言ったのか

柴田氏がまず尾崎さんの妻に音を聞かせると、妻は「あら、随分若い頃の声ね」と笑顔を見せたという。そのうえで「柴田さんがやってくれるんだったら尾崎も喜んでいると思うよ」と快諾した(スポニチアネックス、10月7日)。デイリースポーツは10月8日、新曲は遺族の承諾と協力のもとで作られたと伝えた。

亡くなった人の声は、どこまで使えるのか

披露の1週間前に、関係する判決が出ていた。声優の津田健次郎さんの声をAIでまねた動画が、TikTokに無断で投稿されていた件だ。この裁判で東京地方裁判所は2026年9月30日、「人の声は肖像と同様に個人の人格の象徴で、無断使用はパブリシティー権の侵害」という判断を示した(J-CASTニュース、10月1日)。

ただし、これは「無断」の話だ。今回は遺族が認めている。では、亡くなった人の声はどうなるのか。法務省の検討会が、7月に報告書をまとめた。日本俳優連合の解説(7月28日)によると、報告書は、パブリシティ権が相続されるかどうかは議論が続いていて、統一した見解はないとしている。一方で、故人の声を勝手に使うことは、遺族の敬愛追慕の情を傷つけ、賠償を求める根拠になりうるという。つまり、遺族が認めているかどうかが、大きな分かれ目になる。

ネットの評判

写真週刊誌FLASHのウェブ版「SmartFLASH」は10月8日、「本人が歌ってないのに新曲っておかしい」「声優の声の無断使用と何が違うの?尊厳って何?」といった疑問の投稿がSNSに出ていると報じた。Yahoo!ニュースに載ったスポニチの記事には、10月8日夕方の時点で343件の書き込みがついた。AIに歌わせること自体に反対する声が目立つ一方、もうけ目当てという批判に反論する声もある。

AIがどの録音を学んだのか、どの会社の技術を使ったのかは、どの出典にも書かれていない。権利を持つレコード会社が関わっているのかも分からない。尾崎さんの初期5作を配信するユニバーサルミュージックの公式ページに、この企画の告知は出ていない(10月8日時点)。小林氏はサンケイスポーツに「これはスタート。尾崎さんの側近にいた人たちの思いも込めて動いている」と話した。企画した側は、今後トリビュートライブや映画化も考えているという。

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