読める人が現れた。でも答えは言わなかった

「一生悩んでる」看板の話

10/19 12:50 / 発信国:日本 / 記者:工藤

一生悩んだ看板は「とり留」 読めた人は「もうちょっと悩まれます?」と聞いた

散歩の途中にある看板が読めない。それだけのことを、宮下恵茉さんは「一生悩んでる」と書いてXに投稿した。文字は3つ。写真を見ても、確かに読めない。。。

返信に現れた「うさぎ」さん(@usa_m)の第一声が、この話を面白くした。「おはようございます。わたし読めるんですけど答えをお求めですか?それとももうちょっと悩まれます?」

読めるのに、言わない。先に、本人の希望を聞く。

宮下さんはすぐ食いついた。「えええ!自力で読めはるんですか?スゴイ!真ん中が『り』かな?くらいしかわからなかったのでさっきGeminiに答えを聞いてみましたが…。これはいったい何文字なんでしょう??」

つまり、人に聞く前にAIに聞いていた。しかも、Geminiでは分からなかった。

正解は「とり留」。うさぎさんの説明によれば、1文字目は「登」の草書で「と」、最後は「留」の草書。真ん中は、宮下さんが当てていた「り」だ。うさぎさんは「草書をひらがなのように読ませるのは『変体仮名』って言います~」とも書いている。

読めないほうが、普通だった

読めなかったのは、本人のせいではない。

変体仮名は、明治33年(1900年)の小学校令施行規則で、学校の平仮名から外された。大阪府島本町の公式サイトは、このとき「平仮名は一字一音に定められ」たと書き、それでも「現在でも店の看板や商品の名前に使われているのをよく目にします」と続けている。

126年前に教科書から消えた字が、散歩コースに立っている。読めるわけがない。

国立国会図書館のデータベースには、『図説かなの成り立ち事典』の著者・森岡隆さんの見方が載っている。古い商家がのれんを守りながら、そこに書かれた字も守ってきたのだろう、という話だ。読めない看板は、誰かの手抜きではなく、守られた結果だった。

返信欄は、答えを言う前に聞いたうさぎさんへの称賛で埋まった。「相手が何をもとめているかまず聞く…品位…こんな人になりたい」(@O2Yc7)。堂々と間違えた人もいる。「全部仮名だと思ったから『どりる』って読んでしまった。洒落た荒物屋かなと。」(@skingorou)

宮下さんは「長年の疑問がクリアになりました!」と返した。

あなたはどっちだろう。すぐ答えが欲しいか、もうちょっと悩みたいか。AIは答えを出せなかった。答えを持っていた人は、出す前に「もうちょっと悩まれます?」と聞いた。

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