ホームランの的に当たったのに、本人が却下
オモコロ・藤原仁さんの132日の記録
バッティングセンターの入口で帰った34歳が、9457球かけてホームラン
9457球かけてホームランを打った男がいる。初日に打った球は、0球だった。
ライターの藤原仁さん(34)が、バッティングセンターに通い続けた記録を、10月16日にウェブメディアのオモコロで公開した。5月11日から9月20日まで、132日。9457球、8万1400円。数字は本人が日ごとに記録した。
始まりは高校の体育だった。野球の授業で、先生が三振では許してくれず「当たるまで振れ」と言った。藤原さんはクラス全員の前で8回空振りした。からかっていた同級生も、途中から黙ったという。
その初日、5月11日。藤原さんは入口の前で震え、「ボールの買い方がわからない」まま帰った。打席に立たずに帰宅である。
翌12日、1000円で120球を買う。球速は100キロ。前に転がった球は2球。13日と15日は1球。「バッティングセンター、つらいかも」と書いている。
なぜ、そこまでつらいのか。本人の答えははっきりしている。「目に映る誰よりも俺が圧倒的に下手だ」。後ろに順番待ちの人が立つと、泣きそうになったそうだ。5月28日には、かすった球が体の急所を直撃している。
「あんなものはホームランじゃない」
6月8日、前に飛んだ球が35球に増えた。「当たるわ。かなり当たる」。ところが6月11日には7球に戻る。「バッティングセンター来た日からなにも上達してないぞ。ムカつくわ」。7月24日は72球まで伸びた。8月10日、バットの芯ではなく根元で打っていたと気づく。8月11日、スイングスピードが100キロに届いた。5月は70キロ台だった。
そして9月8日。もうやめようかという場面で、しょうもない内野フライがホームランの的に当たり、ファンファーレが鳴った。打てた。終わりだ。
が、本人は認めなかった。「あんなものはホームランじゃない」。鳴ったファンファーレをなかったことにして、藤原さんはまた通い始めた。
12日後の9月20日。100キロの球を引っ張ると、打球はまっすぐ的へ伸びた。「文句なく、いまの私が打てる一番強い打球だった」。記録はこう締められている。「私は今日を境に『ホームランを打ったことがある男』として生きていきます。あざした。」
運動神経の話も書いてある。藤原さんは昔、「運動神経ないから」と言う人を内心で責めていたという。132日通って、考えが変わった。甲子園を目指すのでもなければ「センスなんかいらない」のだと。
8万1400円を132日で割ると、1日617円。コンビニの昼ごはん1回分だ。それを入口で帰った日から4か月以上積み上げると、「ホームランを打ったことがある男」になれる。
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