安売りに乗ったら、
うちは埋もれる

――ある自動車メーカーの社長が

写真はイメージ Photo by Keenan Barber on Unsplash

10/16 15:58 / 発信国:日本 / 記者:工藤

7年ぶりのパジェロ、三菱の起死回生になるのか

三菱自動車のクロスカントリーSUV「パジェロ」が、7年ぶりに日本へ戻ってくる。国内向けの生産が終わったのは2019年だ。新型は2026年9月2日に東京・高輪のホテルで世界初公開され、発売は12月17日の予定。10月1日に始まった予約は、2週間で4000台を超えた。

この4000台には、意味がある。三菱自動車が2026年度に日本で売るつもりだった台数が、ちょうど4000台だった。売り出す前の予約だけで、1年分の目標に届いてしまったわけだ。会社は、生産を担うタイの工場で日本向けの増産を検討している。

安売りでは勝てない、という話

なぜ、いまパジェロなのか。会社そのものが、じわじわ沈んでいるからだ。

三菱自動車の2025年度の世界販売は79万7000台。前の年から4万5000台減った。売上高は3.9%増えたのに、営業利益は45.6%減の755億円、最終の利益は75.6%減の100億円。売っても儲からない形になっている。東南アジアでは、中国メーカーの安いEVが伸びている。

岸浦恵介社長の危機感は、「価格競争に陥ると埋没する」という一言に表れている。安さで殴り合えば負ける。だから、三菱という名前そのものを立て直す。社長はパジェロについて「すべての三菱車を牽引していくフラッグシップモデルとなる」と話した。会社の顔、つまりフラッグシップに据えるということだ。

実際、中身も安売りではない。ピックアップトラック「トライトン」のラダーフレームを改良した専用の骨組みに、2.4リッターのディーゼル、8速AT。販売店が示している価格は、いちばん安いグレードで619万3000円、最上級で795万800円だ。正式な価格の発表は10月29日の予定。2026年度はタイ、オーストラリア、日本で売り、その先はASEANや中南米、中東など約100の国と地域へ広げる計画だという。

ブランドを壊してきたのは、会社のほうだ

ここが、ややこしい。ブランドで戦うというこの会社は、そのブランドを自分で何度も壊してきた。

自動車工場の組み立てライン
写真はイメージ Photo by Lilian Do Khac on Unsplash

2000年7月、運輸省の監査でリコール隠しが見つかった。きっかけは社員からの内部告発だった。1977年からの約23年で18件、約69万台。社長はその年の11月に辞めた。2004年3月には2度目が発覚する。こちらは約74万台で、5月には前会長ら7人が逮捕され、法人としての三菱自動車も起訴された。

2016年4月には、燃費の試験データの不正が公表された。軽自動車4車種、約62万台。その後の調べで、2006年からの10年間に売った20車種すべてで、法律で決まった書類に事実と違う記載があったと分かった。会社はこの件で約500億円の損失を計上している。

26年のあいだに、3回。いま新しい不正が出たという話ではない。ただ、買う側が「大丈夫なの?」と感じるのは自然だと思う。ブランドで戦うと決めた会社が、そのブランドをいちばん削ってきた、という見方もできる。

ネットの評判

自動車サイトの記事とそのコメント欄では、「待っていた」「内装が高級」という喜びの声が多い。一方で「全幅1925mmは扱いにくい」という不満や、電気で走る仕様を求める声も出ている。大きさへの不満には「扱いにくいと思うなら最初から購入対象にない」と言い返すコメントが並び、ここは割れている。販売店の営業担当者は「発表直後から、おおげさではなく問い合わせの電話が鳴りやみません」と話す。昔パジェロに乗っていた客から「ついに戻ってくるのか」と電話が来る、という話も出ている。

では、実際に手を挙げているのは誰か。別の販売店への取材によると、予約した人は、昔パジェロに乗っていた人と初めての人で、ほぼ半々だという。

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