荷物をお届けできません
料金が未払いです
――その偽メールが、あなたに
警察庁とマイクロソフト、偽サイトの「ひな型」を売る34ドメインを止めた
警察庁は10月14日、偽サイトを作る道具を売っていた業者のドメイン34件を使えなくしたと発表した。米マイクロソフトと組んだ措置で、10月8日から14日にかけて行われた。止めたのは偽サイトそのものではない。偽サイトを作る道具の、売り場である。
「荷物をお届けできません」「料金が未払いです」。この手のメッセージを受け取ったことのある人は、たぶん多い。リンクを押すと本物そっくりの画面が開き、そこにカード番号を入れてしまう。これがフィッシングだ。これまでの対策は、ほとんどが受け取る側への呼びかけだった。押さないで。確かめて。今回は、作る側の仕入れ先を切っている。
2300社ぶんのひな型が、セットで売られていた
止められたのは「コグイ(CoGUI)」と「アイアンマン(Iron Man)」という2つのキットの売り場だ。読売新聞などの報道によると、アイアンマンには、日本の大手企業や病院を含む2300社を超えるサイトのひな型が入っていた。買った人は、偽サイトを自分で作らなくていい。業種や国に合わせて、ひな型を選ぶだけでいい。
売り方も手が込んでいた。秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」などを通じて、不正に手に入れたマイクロソフトのクラウドのアカウントとセットで売られていたという。偽サイトと、それを送りつけるための足。両方が同じ店に並んでいたことになる。
規模の話をする。警察庁のサイバー特別捜査部が2025年に把握した、国内の企業や医療機関などの偽サイトは約12万件。そのうち半数近くが、この2つのキットで作られたものだった。2026年5月以降は、こうした偽サイトへ誘う約1億通のメールが確認されている。
12万件を1件ずつ消しても、作る道具が売られている限り、また増える。元を切ったほうが早い。今回の措置は、そう読める。
日本のデータが、アメリカの裁判所の命令になった
きっかけは日本だった。マイクロソフトの説明によると、2025年の後半に、日本の個人や企業を狙う悪意あるメッセージについて警察庁が同社に情報を渡したことから、調査が始まった。JC3は、会員企業のネットワークを使って日本での被害の実態を集め、別々に見えた事案のつながりを示した。
ドメインの差し押さえを認めたのは、アメリカのフロリダ州南部地区連邦地方裁判所だ。日本で集めた被害の情報が、アメリカの裁判所の命令という形になって戻ってきた。
JC3が10月14日に出した発表では、押収されたサービスは3つ。コグイ、アイアンマンに加えて、不正に手に入れたマイクロソフトやグーグルのアカウントや情報を盗む道具を並べていた「YAMStore」が入っている。マイクロソフトは、YAM Store関連のアカウント2万件以上を無効にし、なりすましや詐欺に使われたドメイン10万件以上をブロックしたとしている。この3つを通じて、2026年1月以降、7万5000を超える組織に10億通を超える悪意あるメッセージが送られた。被害は150か国以上に及ぶ。
お金の話もしておく。インターネットバンキングの不正送金の被害額は、2023年が87.3億円、2024年が86.9億円、2025年は104億円(JC3の発表)。フィッシング対策協議会への報告件数も、2025年は約245万件で、前の年より74万件多かった。
それでも、最後の一押しは自分の指
では、これで偽サイトは来なくなるのか。そうとは書かれていない。今回止まったのは34のドメインで、関係者が捕まったという話は、読んだ出典のどこにも出てこなかった。
警察庁は、あわせて有効な対策も挙げた。1つはパスキーを使うこと。もう1つは、メールの中のリンクを安易にクリックしないこと。道具の売り場を34か所止めた発表に添えられていたのは、これまでと同じ、その一行だった。
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――エドノフーズの江戸野誠一郎社長
- Microsoft等によるサイバー犯罪を支えるエコシステムの無力化に協力(JC3)
- Disrupting the service economy behind transnational cybercrime operations(Microsoft On the Issues)
- フィッシング詐欺ツール販売サイトを停止 米マイクロソフトと共同で―警察庁(時事ドットコム)
- フィッシングサイト「ひな型」販売ドメイン無効化、警察庁がMSと連携(読売新聞/ライブドアニュース)
- フィッシングサイト作成の「キット」、警察庁が解明 流通経路を遮断(朝日新聞/Yahoo!ニュース)
- Microsoft、警察庁などと協力し中国語利用の国際的サイバー犯罪組織を解体(PC Watch)
- 「荷物をお届けできません」などの日本人を狙った詐欺メッセージの送信を支える電子市場をMicrosoftと警察庁が解体(GIGAZINE)