判決は出たのに、
お金が来ない

――訴えた相手は、北朝鮮だった

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10/15 10:49 / 発信国:韓国 / 記者:工藤

金正恩氏に勝訴した脱北女性は賠償金をどこから取るのか

韓国のソウル中央地方裁判所が8月28日、北朝鮮に5000万ウォンを払えと命じる判決を出した。訴えたのは脱北者の崔民敬(チェ・ミンギョン)さん、55歳。請求した額が、そのまま全部認められた。

判決で被告とされたのは「朝鮮民主主義人民共和国」。その代表者として、金正恩氏の名前が書かれた。

5000万ウォンは約3万7000ドル。判決の日の相場だと、日本円で約580万円にあたる。

施設で過ごした5カ月

崔さんは1997年に脱北し、中国で暮らしていた。北京五輪があった2008年に強制送還され、咸鏡北道の穏城(オンソン)保衛部や清津(チョンジン)の保安署など、いくつかの施設でおよそ5カ月を過ごした。そこで性的な暴力と暴行、非人道的な扱いを受けたと訴えた。

施設から出たのは2010年9月9日。出てきたときの体重は27キロ。入る前は57キロあった、とThe Korea Timesは伝えている。韓国に落ち着いたのは2012年。今は北朝鮮監禁被害者家族会の代表をしている。

この裁判には、ひとつ変わった点がある。北朝鮮に裁判の書類を届ける手立てがない。そこで裁判所は公示送達という方法をとって、審理を進めた。

北朝鮮人権情報センター(NKDB)は、この裁判を初めてのケースだと位置づけた。北朝鮮で生まれた人が、北朝鮮の中で受けた人権侵害の責任を韓国の法廷で直接問うた例は、これまでなかったという。戦争のときの出来事や拉致の被害とは、別の種類の裁判だ。

では、だれが払うのか

銀行の金庫の扉(イメージ)
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人のいない法廷(イメージ)
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ここが、ややこしい。金正恩氏から5000万ウォンを取るのは事実上できない、とThe Korea Timesは書いている。

では、どこから取るのか。これまで狙われてきたのは、著作権料だ。韓国の放送局や新聞社が朝鮮中央テレビなど北朝鮮の著作物を使うと、使用料を南北経済文化協力財団に払う。ただ、金剛山で韓国人観光客が撃たれた事件のあと、北朝鮮への送金は止まった。たまった分は裁判所に預けられていて、その額が約28億ウォンある。

元国軍捕虜だった人たちは、2020年に北朝鮮と金正恩氏に賠償を命じる判決をもらい、このお金を取りに行った。取り立ての裁判は、控訴審まで捕虜の側が負けた。なぜ負けたのかは、今回の出典では確かめられなかった。2025年1月には、脱北した別の元国軍捕虜の側の申し立てが通り、経文協が持つお金を差し押さえて取り立ててよいという命令が出た。認められた額は約2億1000万ウォン。それでも、お金は動いていない。

9月16日には、同じソウル中央地裁が、北朝鮮に446億ウォンを払えという判決も出した。2020年に開城(ケソン)の南北共同連絡事務所を爆破された件で、訴えたのは韓国政府だ。

崔さんが次に向かった先

崔さんが目をつけたのは、韓国政府の南北協力基金だ。この基金からお金を取れるようにしてほしいと申し立て、今は最高裁の判断を待っている。そうThe Korea Timesが10月14日に伝えた。

裁判の費用を出したのは、オランダの民間団体だという。崔さんは「人権は普遍的なもので、政治の道具ではない」と話し、金正恩氏を国際刑事裁判所(ICC)で訴追するべきだとも言っている。家族会は、被害の証言を記録し続けるつもりだ。

訴えた理由を、崔さんはこう話している。「長女を連れ出せなかったから、命がけでこの裁判を起こした」。いずれもThe Korea Timesの英語記事からの訳だ。

2020年から、北朝鮮に賠償を命じる韓国の判決はいくつも出ている。そのうち実際にお金を受け取れた人がいるかどうかは、今回の出典では確かめられなかった。はっきりしているのは、差し押さえの命令まで取った元国軍捕虜の側が、今もお金を受け取れていないことだ。

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