どの町にも、
お寺はある
――ある研究者が言ったのは、モスクのことだった
モスクのスピーカーで地震警報、日本なら寺の鐘でできるのか
インドネシアで、モスクの拡声器を地震の警報に使う実験が進んでいる。1日5回、礼拝の時刻を知らせるアザーンを流している、あのスピーカーだ。
進めているのは、日本とインドネシアの共同研究だ。日本側の代表は、京都大学防災研究所の研究員、井上公氏。インドネシア側はBRINのアンディ・エカ・サクヤ氏。日本から3機関、インドネシアから17機関が入り、2025年にジャワ島西部の3州で5年間の試験が始まった。2030年までに、ジャカルタなどで試験運用をするつもりだという。
いくつかのモスクは、もう地震計のネットワークにつながっている。ただ、まだ試作の段階だ。一般の住民に向けた警報は、流していない。
なぜ、スマホではなくモスクなのか
地震が起きると、携帯の回線は使えなくなることがある。だから、すでに町にある設備に頼る。
井上氏は、モスクの強みをこう話している。「どの集落にもモスクがある」。インドネシアには数十万のモスクがあり、その拡声器から1日5回、呼びかけが流れる。手入れしているのも役所ではなく、地域の人たちだ。井上氏の言葉では「人々が維持している」設備である。
モスクは、地域で力を持つ場所として受け止められてきた、という説明もある。誰の声なら、人は動くのか。この実験は、機械の話だけで終わっていない。
日本なら、寺の鐘かコンビニの放送か
では、日本で同じことをやるなら、どの音を使うのか。寺の鐘、コンビニの店内放送、学校のチャイム。思いつくものはある。
ただ、日本には同じ役目の設備がもうある。市町村の防災行政無線だ。町に立っているあのスピーカーから、緊急地震速報も流れる。
問題はその先だ。神奈川県大井町は、屋外スピーカーが聞こえにくい理由を町のサイトで説明している。屋外に向けた放送であること、スピーカーと住居の位置関係、それに「近年の住居の遮音性が上がっている」こと。風で音が流され、やまびこで聞き取りにくくなることもある、とも書いている。だから町は、家庭用の受信機や電話での聞き直し、メールも使ってほしいと案内している。
ここが、ややこしい。スピーカーはある。でも、家の中には届きにくい。
速さは、スピーカーを増やしても変わらない
伝える速さはどうか。サクヤ氏によると、震源から50キロの村で、動くのに使える時間は5秒から10秒しかない。
日本も事情は同じだ。気象庁は、緊急地震速報を出してから強い揺れが来るまでを「数秒から長くても数十秒程度」と説明している。さらに、内陸の浅い場所で地震が起きたときは、震源に近い場所へは「原理的に間に合いません」とも書いている。拡声器を何台増やしても、この数秒は増えない。
では、何のための実験なのか。サクヤ氏は2026年7月末、視察で日本にいるときに熊本地震に遭った。緊急地震速報が出たあと、テレビが、取るべき行動を示した。パニックは起きなかった。彼はこう話した。「これこそがまさに私たちが再現したいものだ」。
井上氏が挙げたモスクの強みは、音の大きさではない。1日5回鳴っていて、住民が自分たちで手入れしている設備だ、という点だった。
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- Indonesia looks to mosque loudspeakers to double as earthquake warning systems(The Guardian、AOL配信版で閲覧)
- インドネシア緊急地震速報・対応システムの開発(JST/SATREPS 課題ページ)
- インドネシア緊急地震速報・対応システムの開発(JST プロジェクトデータベース)
- インドネシア、緊急地震速報を整備へ=日本支援、共同研究着手(時事ドットコム)
- 緊急地震速報の特性や限界、利用上の注意(気象庁)
- 防災行政無線(屋外スピーカー)が聞こえない時の対策(神奈川県大井町)
- Ilmuwan Jepang-Indonesia Rancang Alarm Gempa via Pengeras Suara Masjid(Samudra Fakta)
- Indonesia Turns to Mosque Loudspeakers for Earthquake Alerts in Japan-Backed Project(IQNA)
- Indonesia and Japan Develop Mosque Loudspeakers as Earthquake Warning Alarms(Indonesia Expat)
