亡くなった声優の声が、そのまま流れた
『ドラゴンボール超 ビルス』初回放送
写真はイメージ Photo by Jonathan Farber on Unsplash
『ドラゴンボール超 ビルス』故人の声、AIではなく本人の演技?!
2018年に亡くなった声優・石塚運昇さんの声が、2026年10月11日の深夜、テレビから流れた。フジテレビ系で23時15分に始まったアニメ『ドラゴンボール超 ビルス』の第1話「破壊の神様」だ。ミスター・サタンの声は石塚さん、界王の声は2021年に亡くなった八奈見乗児さんだった。公式サイトのキャスト表にも、二人の名前がそのまま載っている。
AIで作った声なのか。そうではない。流れたのは、本人が生きている間に録った演技だ。
なぜ、いまも二人の声が聞けるのか
『ドラゴンボール超 ビルス』は、新しく作ったアニメではない。2015年から2018年まで放送された『ドラゴンボール超』を、新規カットの追加と描き直し、物語の組み替えで作り直した「エンハンスド版」だ(公式サイト)。絵には手が入ったが、声は当時のものが使われている。
石塚さんは2018年8月13日に67歳で亡くなった。所属事務所が発表したのは17日だった。八奈見さんは2015年9月、療養のため北の界王とナレーターを降板した。第12話からは龍田直樹さんが引き継いでいる(ねとらぼ)。八奈見さんは2021年12月3日に90歳で亡くなった。青二プロダクションが発表したのは14日だった。
つまり、新しく録ることはもうできない。ビルスが出てくる序盤の話には、二人の声が残っている。生成AIで声を作ったという説明は、公式からは出ていない。
亡くなった人の演技を使うのに、許可は要るのか
ここが、ややこしい。声優や俳優のような実演家には、自分の演技を録音・録画することを許すかどうかを決める権利がある。
ただし、実演家が映像作品に声を録ることを一度許すと、そのあとの複製や放送には権利を主張できない。許諾の機会が1回きりなので、ワンチャンス主義と呼ばれている。
一方で、名前を出すか出さないかを決める権利と、名誉を傷つける改変をされない権利は残る。この二つをまとめて実演家人格権という。著作権法101条の3は「実演を公衆に提供し、又は提示する者は、その実演の実演家の死後においても、実演家が生存しているとしたならばその実演家人格権の侵害となるべき行為をしてはならない」と決めている。つまり、実演家人格権は亡くなったあとも守られる。だから、クレジットに名前が残ることには意味がある。
今回、制作側が遺族や事務所とどんなやり取りをしたのかは、公式からは何も出ていない。出典では確かめられなかった。
ネットの評判
ORICON NEWSは10月11日23時52分の記事で、放送中にネット上で出た声を紹介した。「サタンの声が石塚さんのままで泣きそう」「また八奈見乗児さんの界王様に会えて嬉しかった」。当時のままの声への驚きと、懐かしさをつづった投稿が目立つ。ネットの声は、何が使われたかの証拠にはならない。
声の扱いは、いま業界が神経を使っている話でもある。協同組合日本俳優連合など音声業界の3団体は2024年11月13日、「生成AI音声を、アニメーション及び外国映画等の吹替では使用しないことを求める」と表明している。10月11日に聞こえたのは、やはり作られた声ではなく、本人が残した演技だった。
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- アニメ『ドラゴンボール超 ビルス』公式サイト(キャスト表記)
- 【公式】ドラゴンボールオフィシャルサイト「放送直前!『ドラゴンボール超 ビルス』超(スーパー)開幕広告の大規模展開がスタート!」(2026年10月7日)
- 【公式】ドラゴンボールオフィシャルサイト「アニメ『ドラゴンボール超 ビルス』初回放送をより楽しもう!これまでの公開情報を総まとめ!」(2026年10月9日)
- 協同組合日本俳優連合「生成AIに関する音声業界三団体の主張」を発表しました(2024年11月13日)
- 芸団協CPRA 用語辞典「実演家人格権」
- 著作権法 第四章第七節(第101条の2・第101条の3)条文
- 公益社団法人 著作権情報センター「著作隣接権とは?」(ワンチャンス主義・保護期間)
- ORICON NEWS「『ドラゴンボール超 ビルス』故人の声優出演でファン涙 ミスター・サタン役は石塚運昇さん、界王役は八奈見乗児さん」(2026年10月11日23時52分)
- 北國新聞(オリコン配信、同記事の転載)
- ねとらぼ「界王さまの声優・八奈見乗児さんが療養のため「ドラゴンボール超」降板」(2015年9月25日)
- シネマトゥデイ「声優・八奈見乗児さん90歳で死去」(2021年12月14日)
- ORICON NEWS「声優・石塚運昇さん死去 67歳」(2018年8月17日)
- MANTANWEB「ドラゴンボール超 ビルス:数々の激闘を経て成長する悟空 光輝く神龍! OP、ED映像公開」(2026年10月12日0時9分)
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