1年3ヶ月後、コンビニで万引きをしたことを思い出した
――逮捕された男が、警察の調べに
札幌の納豆巻き203円、1年3か月後に男を逮捕
札幌市白石区のコンビニで、棚から納豆巻きが1本消えた。2025年6月26日の朝7時ごろ、値段は203円。この1本をめぐって、1年3か月後に44歳の会社員の男が逮捕された。
気づいたのは店長だった。「納豆巻き1本が盗まれているのを防犯カメラで確認した」。そう警察に通報して、事件になった。
逮捕は2026年10月9日。事件が分かってから、約1年3か月がたっていた。捕まったのは、北海道岩見沢市に住む44歳の会社員の男。疑いは窃盗だ。捕まった場所は苫小牧市内だった。納豆巻きが消えた札幌でもなく、男が住む岩見沢でもない、3つめの市である。
「思い出した」と男は話した
男は容疑を認めている。警察の調べに答えた言葉が、この話のいちばん変なところだ。「コンビニで万引きをしたことがあったことを思い出した」。
やっていない、とは言っていない。言われて、思い出した、という言い方である。
では、なぜ1年3か月もかかったのか。その説明は、出典にした報道には出てこない。分かっているのは、店長の通報で事件が発覚し、防犯カメラなどの捜査から男にたどり着き、苫小牧で捕まった、という順番だけだ。盗んだ理由も、ほかに盗みがないかも、警察はまだ調べている。
203円。たった1本ではないか、と思う人もいるだろう。だが刑法235条には、盗まれた物の値段が一言も書かれていない。値段で線を引く仕組みがないのだから、203円でも罪の名前は窃盗になる。
苫小牧市のページに、盗まれた物の名前が残る
男が捕まった苫小牧市の公式サイトに、「窃盗、空き巣、万引き等の発生」というページがある。北海道警察本部や苫小牧署が流した情報を、市が1件ずつ並べたページだ。
氏名は載っていない。代わりに載るのが、年齢と職業と、盗まれた物の名前である。釣り具。食料品。ペット用品。酒類。照明器具。品名の欄を追っていくと、その町で何がなくなったのかが分かる。
全国の数字と並べてみる。警察庁が2025年の犯罪情勢としてまとめた万引きは、10万5135件。前の年より7.0%増えた。1日に割ると288件だ。このうちコンビニで起きたものが2万2929件で、1日に60件あまり。こちらは前の年より14.6%増えている。
ここが、ややこしい。全国の表の中では、203円の納豆巻きは10万5135分の1という数字になる。苫小牧市のページでは、同じ1件が「釣り具」や「食料品」という品名のまま残る。同じ万引きでも、数字になって見えなくなることもあれば、品名のまま町に残ることもある。
ネットの評判
事件を伝える記事がYahoo!ニュースに配信されると、33件のコメントが付いた。目立つのは、額が小さくても捕まるのは当たり前だという受け取り方だ。少ない額でも1年たってから逮捕されることが、万引きの歯止めになる。この趣旨の書き込みに66件の共感が付き、いちばん多かった。「万引き」という言い方が罪のハードルを下げているから、窃盗と呼ぶべきだ、という指摘もある。
別の見方もある。203円の事件を1年も追い続けるはずがないから、ほかの事件の捜査の途中で浮かんだのではないか。初めてではないだろう。そう推し量る声だ。防犯カメラの映像で被害届を出しておけば、次に店へ来たときに逮捕される、と、いまの仕組みを書いた人もいた。
盗まれたのは、203円の納豆巻き1本だった。そのために、1年3か月後、人が1人、別の町で捕まっている。
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