障害があっても、
そういうことするの?

――ある警察官が、障害のある客に

写真はイメージ Photo by Thomas Hoang on Unsplash

10/8 11:01 / 発信国:台湾

台北のゲイバー捜索、警察官6人が処分 アジア初の同性婚の国で

ある町に、14年続いた店がある。常連ばかりで、外から見ても何の店かは分からない。ある日の夕方、警察が入ってきた。客は全員しゃがまされ、障害のある客に警察官が声をかけた。――これはたとえ話だ。

これは日本の話ではない

起きたのは台湾の台北市、西門町だ。10月3日の午後、台北市警察局万華分局が、西門町のゲイバーに裁判所の令状を持って入った。BDSMをテーマにした男性向けの店で、14年営業している。警察は責任者を含む52人を署へ連れて行った。責任者はわいせつにかかわる罪の疑いで台北地検に送られ、ほかの人は社会秩序保護法違反で処分された。

なぜ、警察は入ったのか。警察の説明では、公序良俗に反するという市民の通報を受け、検察官の指揮で令状を取った。この店には、10か月で13回の通報が入っていたという。

問題になったのは、やり方だ。台湾LGBTQ+ホットライン協会などの団体は4日、声明を出した。警察は令状を見せるのを断り、全員をしゃがませ、携帯の使用を禁じ、障害のある客には侮辱する言葉をかけた。台湾の報道によると、現場の警察官の一人は、障害のある客に向けて「障害があっても、そういうことができるのか」という意味のことを言っている。

団体は「最も厳正な懸念と強い抗議」を示し、抑圧の歴史を繰り返すなと訴えた。この「歴史」とは、こんな出来事だ。2004年1月、台北市の農安街で警察が男性ばかりのパーティーを摘発し、92人を連行した。全員が血液検査を受けた。22年前の話である。4日の午後には、西門紅楼の前に100人を超える人が集まり、虹色の旗を振って抗議した。

5日、台北市警察局長の林炎田が、警察官が身につけたカメラの映像を調べ、処分を出した。現場の4人に申誡2回、不適切な発言を止められなかった捜査隊長に記過。万華分局長は監督が行き届かなかったとして自ら申誡2回を申し出た。あわせて6人である。蒋万安台北市長も「非常に遺憾」と述べて謝った。

ここで、多くの人が引っかかるはずだ。台湾は、2019年5月にアジアで初めて同性婚を法律で認めた国だ。元警察官の石明謹は、取材にこう話している。警察の教育に問題があるのではない、そもそも教育がないのだ、と。

ネットの評判

台湾で広く使われているSNS「Threads」では、捜索への批判が目立つ。歌手の炎亞綸は、文明は自動で進むものではなく一歩ずつ守るものだと投稿した。返信には、進歩には何世代もかかるのに、後退には一度の無関心で足りるという声が並んだ。アジアで初めて同性婚を認めた国でこんなことが起きるとは想像もしなかった、という声もあった。

怒りの向きは一つではない。捜索のきっかけとして、9月の市議会で未成年者の出入りを質した民進党の市議の名前が挙がり、責任を問う声も出た。市議は、心配したのは未成年者の保護で、同性愛とは関係ないと説明している。

日本は、まだその手前にいる

では、日本で同じことが起きたらどうだろう。

裁判所の建物
写真はイメージ Photo by Michael Hart on Unsplash

日本には、性的指向を理由にした差別を禁じる個別の法律がない。2023年にできたLGBT理解増進法について、内閣府は「差別を禁止する規定は設けられておりません」と説明している。憲法のもとで差別的な取り扱いは禁止されている、とも書いている。

同性婚も認められていない。認めないことが憲法に反するかを争う6件の訴訟は、2026年3月25日に最高裁の大法廷へ回された。5つの高裁が憲法違反と判断し、東京高裁の別の裁判部は合憲とした。判断が割れている。最高裁が初めて憲法の判断を示すのは、早くても2027年になる見通しだ。

制度が先にできても、現場の言葉はすぐには変わらない。日本は、その制度の手前にいる。

台北市警察局が6人の処分を発表したのは、捜索の2日後だった。

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