遠回りでいいから、
坂は通りたくない
――ある坂の町で、買い物帰りに
写真はイメージ Photo by Bart Dunweg on Unsplash
坂の街サンフランシスコの「一番平らな道」地図 日本でも材料は無料で揃う
買い物袋を両手に提げて、坂の下に立つ。目の前の階段を上がれば家は近いが、遠回りでもいいから平らな道を教えてくれる地図があればいい。
舞台はサンフランシスコ 個人が作った「一番平らな道」の地図
これは日本の話ではない。坂の多い米サンフランシスコで、市内の任意の2地点について、距離ではなく登りの少なさを優先した経路を出す地図サイト「Flatten SF」が公開された。作ったのは開発者のドリュー・エドワーズ氏。技術系の投稿サイトHacker Newsでは、2026年10月7日時点で308点・114件のコメントが付いている。
仕組みはサイトに書かれている。16万本の街路区間に、USGSの1メートル解像度のLiDAR標高データと、Overture/OpenStreetMapの街路網を重ねる。計算はサーバーではなく、利用者のブラウザの中で終わる。徒歩と自転車を切り替えられ、徒歩では階段を通ってよく、自転車では外す。測るのは出発地と目的地の標高差ではなく、途中の登りの累計だ。
肝は重み付けだ。1フィートの登りは200フィートの歩行に相当する、という比率で登りに値段を付けている。日本の単位に直せば、1メートル登るのを避けるためなら200メートル遠回りしてよい、という計算だ。スライダーを動かせば、最短の経路から最も平らな経路まで、距離と登りの両方で他に負けない経路だけが順に出る。作者はこの計算を市内の地区の組み合わせ1,260通りで試し、結果を公開したコードの説明に書いている。登りが最小になる徒歩経路は、最短経路より約14%長いだけで、登りは約39%少ない。最も急な坂の勾配は、典型的には27%から17%に下がる。
ネットの評判
Hacker Newsのコメントでは、精度を上げる方向の要望が多い。累計の登りだけでなく、最大勾配に上限を設けてほしいという声が目立つ。22.7%の勾配の道が選ばれたという報告もある。作者は、スライダーが釣り合いを取っているのは距離と累計の登りだけで、急さは最適化していないと認めている。別の報告では、市の「Slow Streets」(生活道路の通り抜けを抑える取り組み)のタグを読み違えて平らな通りを外す不具合が見つかり、作者が直した。けなす声より、作りかけの道具を一緒に直す調子の方が強い。
日本の坂の町でも、材料は無料で手に入る
同じことを日本でやるのに、特別なものは要らない。作者は公開したコードの説明に、この方法にサンフランシスコ固有のものは何もない、と書いている。差し替えるのは対象の範囲と投影、地面の標高データ、地区の境界などだ。分析のコードはMITライセンスで、街路の形はOpenStreetMap由来のため再配布には条件が付く。
その標高データが、日本にもある。国土地理院は2023年11月30日に1メートルメッシュの標高データの提供を始め、2025年10月31日に範囲を広げた。提供する範囲は、1辺約1キロの3次メッシュで数えて約61%にあたる。ただし国土地理院は、この中に海の部分や一部未整備のエリアも含まれるため、実際に整備された面積は国土の5割弱だと注記している。入手は無償で、出典を書けば商用でも使える。
大手は先に動いている。ナビタイムジャパンは2024年8月8日、徒歩のルート検索に「坂道が少ないルート」と、坂の急さを色の濃淡で見せる表示を加えた。高齢の人、荷物を持つ人、ベビーカーを押す人からの要望が背景にあると説明している。坂を上がる手段そのものを作っている町もある。長崎市は市道の階段部3カ所に、定員2名・速度毎分15メートルの「斜面移送システム」を置いている。
サンフランシスコの計算では、遠回りは約14%で、登りは約39%減った。その計算に要る標高データは、日本では無償で配られている。
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