このサイン、
僕は書いてない

――ある漫画家が、自分の名前入りの絵を見て

写真はイメージ Photo by Scott Graham on Unsplash

10/7 11:35 / 発信国:米国

ニューヨーカー誌の漫画家15人以上、ChatGPTが署名だけ本物に

ある書道教室の先生のもとに、生徒から一枚の写真が届く。見覚えのない作品の隅に、自分の落款が押されている。書いた覚えはない。

舞台はニューヨーカー誌、隅の署名は「BLOPER」

これは日本の話ではなく、米国の出来事を身近な場面に置き換えたたとえ話だ。実際の舞台は米誌ニューヨーカーの一コマ漫画で、隅にあったのは落款ではなく手書きの署名だった。米ニーマン・ラボのアンドリュー・デック記者は、ChatGPTの画像生成が同誌風のAI製漫画に、実在する漫画家の本物の署名を入れていると報じた。署名を使われた寄稿者は15人以上。ブレンダン・ローパー、エミリー・フレイク、ジョー・デイター、ジェイソン・アダム・カッツェンスタインらの名前が挙がっている。

発端は一枚の漫画だった。天国の門の前で、ドリー・パートン氏がフランケンフルター博士の扮装をしたティム・カリー氏と腕を組み、受付に立つ神に「連れはこの人で間違いなかった」(訳)と話す。右下の署名は「BLOPER」。ローパー氏のペンネームだが、描いたのは本人ではない。8月下旬に2人が相次いで亡くなった直後、パートン氏のファンがフェイスブックに投稿し、ツイッターでは1件の投稿に2万5千件の「いいね」が付いた。

ローパー氏はニーマン・ラボに、自分の名前は自分の名前であり、人格そのものを侵されたように感じたと語った。署名は「作品が本物であることの証明書」(訳)だという。フレイク氏は、言っていない発言を自分のものとして引用されたようなものだと話した。

OpenAIは、創造性の未来は根本的に人間のものだと考えているとし、「モデルの不具合や意図しない動作を指摘してくれるコミュニティに感謝している」(訳)とコメントした。なぜ署名が出るのかの説明はなく、出ないように直したかどうかも、出典では確かめられなかった。

覚えたのは絵柄ではなく、隅の記号

技術者が集まる掲示板ハッカーニュースで最も支持された説明はこうだ。学習データには署名入りの漫画が大量に含まれ、モデルは署名を作風に付いてくる視覚要素として扱っている。名前として特別に扱う仕組みは入っていない。これは読者の説明で、OpenAIの見解ではない。

テーブルに積まれた雑誌
写真はイメージ Photo by Annie Spratt on Unsplash

隅の印をAIが再現した例は、以前にもある。英国の高等法院は2025年11月4日、ゲッティイメージズがステビリティAIを訴えた裁判で、初期のステーブル・ディフュージョンがゲッティの透かしを再現した画像を作れたと認めた。ただし侵害は限定的で過去のものだとして、商標権侵害の認定は一部にとどまった。

ネットの評判

ハッカーニュースでは、本誌が10月7日に見た時点で541点、405件のコメントが付いていた。目立つのは、これは著作権ではなくパブリシティ権や商標の問題だという声だ。作品の著作権と署名は分けて考えるべきだという意見も並ぶ。責任の所在では、欠陥のある製品を出した側だという声と、署名を消さずに投稿した利用者だという声が対立した。あるユーザーは、生成した漫画から偽の署名を毎回消していると書いている。

ニューヨーカー誌の広報は、コンデナストがLLMの開発元に同誌の漫画の学習を許可したことは一度もないと確認した。2024年に同社とOpenAIが結んだライセンス契約に、漫画は入っていない。

AI製の漫画は、紙の誌面にも入り始めている。昨年、ボルティモア・サン紙は30年以上同紙に漫画を載せてきたケビン・カラフー氏を解雇し、オピニオン面にOpenAIが生成した漫画を載せるようになった。

デイター氏は、クレジットカードを不正に使われたことがある。それでも、今回のほうが侵害だと感じると述べた。「あのとき、連中は私のふりはしなかった」(訳)

次の視点

43万円の新型冷蔵庫、錆びて見える

Xで話題のアクア「AQR-DUX51B」

ジャンルを変えて「おもしろ」から。いま読まれています アクアの新型冷蔵庫が錆びて見えるのは、わざとだった

40年仕入れてるけど、
こんな値は初めて

――エドノフーズの江戸野誠一郎社長

ジャンルを変えて「政治経済」から。いま読まれています 銚子のサバ加工、約2割が倒産や廃業 国産に替える道はあるのか

高校が遠くなると、
お金がかかる

――兵庫県で、1万3000筆の署名に出た声

ジャンルを変えて「子育て」から。いま読まれています 2040年度までに県立高145校減 富山県は「閉校」の表現をやめた
出典

いま読まれている記事

  1. 1徳永英明、喉の不調から復帰 倉敷公演を無事に終える 中止4公演はどうなる?
  2. 2「PayPayで十分」は本当? JR東「teppay」の還元率を比べてみた
  3. 3「ブルーウォーカーにスマホ乗っ取られた」 ラヴィット!6年目で初の遅刻
  4. 4タイ王妃が737を7時間操縦して北海道へ 冷ややかな声は、なぜ出てこないのか
  5. 53位DeNAが日本シリーズへ 今年できた「2勝アドバンテージ」はなぜ使われなかった
← トップへ戻る