119番、
声が出せない日は?

――和歌山県田辺市で、登録していたのは22人

写真はイメージ Photo by Jonas Leupe on Unsplash

10/22 00:24 / 発信国:日本

声を出さない119番、田辺市の登録22人分が漏えいか 新規受付は停止中

和歌山県田辺市が10月15日、声を使わずに119番通報できるNET119緊急通報システムで、登録者22人分の個人情報が漏れた可能性があると発表した。漏れたかもしれないのは、本人の氏名、性別、生年月日、住所、メールアドレス、電話番号、ファックス番号。それに、いざというときの連絡先として登録した人の氏名、続柄、電話番号、ファックス番号、メールアドレスも入る。原因は、このシステムを運営する株式会社アルカディアが、外から不正アクセスを受けたことだ。

声を出さずに119番をかける仕組み

そもそもNET119とは何か。消防庁の説明はこうだ。音声での119番通報が難しい、聴覚や言語機能に障害がある人のための仕組みだ。スマートフォンなどで通報用のサイトを開き、「救急」か「火事」かの別と、自分がいる場所を入れる。それだけですぐ消防本部につながり、あとは文字のチャットで詳しいことを伝える。声は、一度も使わない。

スマートフォンのチャット画面
写真はイメージ Photo by Samuel Angor on Unsplash

ただし、使うには前もっての登録がいる。住んでいる地域の消防本部に申し込んでおく必要がある。登録していない人が、その日いきなり使うことはできない。

全国では、2026年4月1日の時点で719の消防本部のうち677本部がこの仕組みを入れている。9割を超えている。そのうちの一つ、田辺市で登録していたのは22人だった。

通報はできる。でも、新しく登録はできない

田辺市は、すでに登録している人の通報機能はこれまでどおり使える、と書いている。止まっているのは新規登録の受付のほうだ。では、いつ再開するのか。市の発表には書かれていない。

つまり、このニュースでNET119を初めて知った田辺市の人は、いま申し込めない。事前の登録がいる仕組みなので、受付が止まっている間は、使いたくても入り口で待つことになる。

漏えいの元になった不正アクセスは、10月11日の午前6時26分に始まった。アルカディアの報告によると、添付ファイルを公開するサーバーにディレクトリトラバーサルという弱点があり、そこから設定ファイルを取られた。会社が気づいたのは同じ日の午後11時40分。きっかけは、データベースの負荷がおかしいことだったという。侵入経路をふさいだのが12日の午前3時、全サービスの復旧が15日の午後3時10分。始まりから、およそ105時間かかっている。

被害はNET119だけではない。ITmediaの報道では、防災メールのSpeeCAN RAIDENでメールアドレスが最大およそ313万6000件、消防職員への一斉連絡に使う119RAIDENで名前とメールアドレスが最大およそ9万7000件、NET119では最大およそ1万3000件が漏れた可能性がある。田辺市は、市が使っているSpeeCAN RAIDENについては、市民の個人情報をアルカディアに渡していないので漏えいはない、と確認したと書いている。

ネットの評判

アルカディアが10月19日に出した、分単位の詳しい経過報告が、技術に詳しい人たちの間で読まれている。これを伝えたITmediaの記事には、はてなブックマークが429件付き、コメントが並んだ。

多いのは「ディレクトリトラバーサルは基本的な弱点で、防げたはずだ」という厳しい声だ。一方で、ここまで細かく経緯を出したことを「賞賛に値する」と評価し、他の会社も同じように公表すべきだという声も目立つ。気づいたあとすぐに切らず、対応を続けた判断を疑問に思う声や、「吐きそう」「マジで笑えん」と、現場の大変さに反応する書き込みもあった。

田辺市は、問い合わせを消防本部指令課(0739-34-3119)と障害福祉課(0739-26-4902)で受け付けている。すでに登録している22人は、今も声を使わずに119番できる。これから必要になる人が登録できるのは、受付が再開してからだ。

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