日本と韓国を結ぶ
トンネルって知ってる?

――国際ハイウェイ財団が、九州に掘った穴について

写真はイメージ Photo by Eryk Fudala on Unsplash

10/21 23:43 / 発信国:日本

日韓トンネルはいまどこまで? 唐津の穴は540メートルで止まっている

佐賀県唐津市鎮西町の山の中に、直径6メートルの穴が開いている。韓国の釜山まで海の下を掘り抜くつもりで開けた入口だ。看板には日本語とハングルで「日韓トンネル唐津調査斜坑」と書かれている。掘れている長さは540メートル。1986年に起工式をして、40年でそこまでだ。しかも2007年11月以降、掘る工事そのものが行われていない(佐賀新聞、2022年8月27日)。

日本と韓国が陸でつながれば、車で釜山まで行ける。考えると楽しい。でも、掘ってきた側の説明を読むと、入口でつまずく。

いまの日韓トンネル構想は、1981年11月に旧統一教会の創設者・文鮮明が「国際ハイウェイ」構想として言い出したものだ。掘っているのは関連団体の国際ハイウェイ財団で、唐津市は穴について「市は一切この事業に関与していない」と話している。教団ではかつて「1ミリ5万円献金」、つまり1ミリ掘るために5万円という献金があったと報じられている(デイリー新潮、2022年8月1日)。

車では通れない

推進側のNPO、日韓トンネル研究会のサイトには、走り方がこう書いてある。「高速鉄道により旅客輸送、貨物コンテナ、カートレインによる車の輸送が現実的」。自分で運転して海の下を走る話ではない。車はカートレインに載せる。

鉄道トンネルを走る列車
写真はイメージ Photo by Florian van Duyn on Unsplash

なぜそうなるのか。長さだ。同じサイトの数字では、海峡の幅は約200キロ、海底の部分だけで150キロ。水深は160〜200メートルに達する。英仏海峡トンネルは全長50キロ、うち海底38キロだから、日韓トンネルはその4倍以上になる(中央日報、2025年12月15日)。工費は推進側の見積もりでも10兆円、工期は約10年だ。

韓国政府は2011年に白紙化していた

ここが日本ではあまり知られていない。2011年1月5日、韓国の国土海洋部は、釜山〜対馬〜福岡の222.6キロを結ぶ韓日海底トンネルについて「経済性がない」と発表した。交通研究院の調査で、事業費は100兆ウォン以上、工期は20年以上、費用便益比は妥当性の基準0.8に大きく届かなかった(イートゥデイ、2011年1月5日)。

温度差も、たぶん想像の逆だろう。2021年2月、韓国ではこのトンネルが釜山市長選の争点になり、全国調査まで行われた。MBCがコリアリサーチに委託した調査(2月8〜9日、805人)では反対53.2%、賛成30.8%。釜山だけの調査でも反対46.5%、賛成41.2%だった。一方、日本ではこの争点がほとんど報じられなかった(オーマイニュース、2021年3月15日)。

そして韓国では、この構想がいま法廷の話になっている。2025年12月、教団と政界の癒着を調べる特別検察の資料に、ロビー活動の背景として「日韓海底トンネル構想の実現のため」と書かれていたと報じられた(京郷新聞、2025年12月26日)。元世界本部長の尹永浩は2026年1月、政治資金法違反などで懲役1年2か月の1審判決を受けている(ニュースピム、2026年1月28日)。

ネットの評判

韓国のコミュニティサイト「クリアン」では、2021年7月の投稿に131件のコメントが付き、反対がほとんどだった。「日本だけが得をする事業」「利権事業になる」という声が目立つ。賛成しているのは不動産の値上がりを期待する釜山の一部だ、という書き方だった。日本側は、そもそも話題になりにくい。2022年の記事に、SNSで言及する投稿が目立つようになったと書かれている程度だ(JBpress、2022年6月17日)。

白紙化を伝えた2011年の記事で、韓国側の担当者はこう話していた。「今後、海底トンネル建設についての論争はなくなることが期待される」。それから15年。唐津の穴では、たまった水をポンプでくみ出す作業だけが続いている。

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