下水道の補助金は出た。でも、
工事をする人がいない
――担当職員は24年で約2万人減った
八潮の陥没、遺族が1億2500万円を請求 下水道を直す人は足りているのか
埼玉県八潮市で2025年1月、県道が陥没してトラックが転落し、運転手の男性=当時74歳=が亡くなった事故で、男性の娘3人が埼玉県を訴えた。求めているのは、計約1億2500万円の損害賠償。提訴は7月28日付で、分かったのは10月21日だ。訴えられたのは、現場の地下にある下水管を管理していた県だ。
訴状は、その下水管が「県が管理する公共施設としてあるべき安全性を欠き、管理のかしがあった」と主張している。亡くなった男性については「日々事故を起こさぬよう細心の注意を払って業務に従事していた」とある。それなのに起きたのは「突然道路が陥没し、車両ごと落下したという歴史的にみても例を見ない悲惨なもの」だった、とも書かれている。大野元裕知事は「現在、訴状の内容を精査しているところで、今後とも適切に対応していく」と話した。
男性は事故の直後、まだ会話ができる状態だった。それでも救助は進まず、遺体が下水管の中で見つかったのは、同じ年の5月2日だ。
なぜ、道に穴が開いたのか
県が設けた原因究明委員会は、2026年2月19日の会合で最終報告書を取り上げた。訴状によれば、現場の下水管は「硫化水素による腐食などで、本来有するべき安全性を欠いていた」。硫化水素は、下水道の世界では昔から知られた敵だ。東京新聞は、事故の3年前の定期検査で腐食のリスクが見逃され、第三者委員会が点検の仕組みの不備を指摘したと伝えている。
ここから、話は八潮だけのものではなくなる。
管は古くなり、人は半分近くに
国土交通省によると、全国の下水管の長さは合わせて約50万キロ。このうち、標準の耐用年数50年を超えたものが約4万キロ(約7%)ある。10年後には約11万キロ(約22%)、20年後には約23万キロ(約45%)になる見込みだという。20年たてば、2本に1本近くが「年を取った管」になる。
では、だれが見て回るのか。ここが、きつい。下水道を担当する自治体の職員は、1997年度の4万7000人から、2021年度には2万6900人になった。24年で約2万人減ったという。下水管に関係する道路の陥没は、2022年度に2600件。ほとんどは深さ50センチ未満の小さなものだ。
遺族が県を訴えた構図の裏で、同じ古い管を抱える自治体から出ているのは、お金の話だけではない。使いやすい補助金を求める声と並んで、補助金があっても人材不足で工事が進まない、という心配の声が上がっている。お金が付いても、設計して、発注して、立ち会う職員がいない。ただ、現場の技術者が名前を出して「次はうちかもしれない」と語った声そのものは、出典では確かめられなかった。
国も動いた。八潮の事故を直接の背景に、改正下水道法が用意された。点検の回数を増やす案も、国の検討会で議論されている。ただ、この改正では、下水道料金のもとになる原価に「将来の改築に必要な資金として積み立てるべき額」を加える考え方も明記される。点検を増やすお金の出どころは、使う人の料金だ。
ネットの評判
提訴を伝えたYahoo!ニュースの記事には、1100件を超えるコメントが付いた。多いのは遺族を支持する声だ。道路に穴が開く事態は予見できないから運転手に落ち度はない、腐った管を放っておいた県の責任は重い、という意見が目立つ。5ちゃんねるの書き込みをまとめたサイトでも「これはやるべき」「もっと払ってあげなさい」と並んだ。
一方で、金額を疑う声もある。亡くなった男性が74歳だったため、逸失利益の計算では1億円は通りにくい、年収と平均余命から見れば1000万〜2000万円が相場だ、という指摘だ。補償は必要だが、法律上の額には限界がある、という立場だ。コメント欄には、国内のインフラの古さを心配する声や、海外への支援より国内を先にすべきだという声もあった。
下水管は約49万キロ(2022年度末)、それを担当する自治体の職員は2万6900人(2021年度)。1人あたり18キロ分を受け持つ計算になる。
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お金がかかる
――兵庫県で、1万3000筆の署名に出た声
- 埼玉陥没事故の運転手遺族が提訴 県に損害賠償1億円超求め(共同通信)
- 同記事のコメント欄(Yahoo!ニュース)
- 八潮の道路陥没、トラック運転手遺族が埼玉県提訴「下水道管理に問題あった」1億2500万円賠償求める(東京新聞)
- 八潮市道路陥没事故 遺族が1億円超求め県を提訴/埼玉県(テレ玉)
- 八潮市で発生した道路陥没事故に関する原因究明委員会(埼玉県)
- 上下水道:下水道の維持管理(国土交通省)
- 報道発表資料:埼玉県八潮市の道路陥没事故を踏まえた緊急点検結果等を公表します(国土交通省)
- 加速する下水道老朽化「どこでも起こり得る事故」埼玉・八潮の大規模陥没(nippon.com)
- 【閣法#38】下水道の老朽化対策を法制化へ 点検結果の公表、広域連携、道路地下の管理を見直す法案(国会法案解説)
- 改正下水道法とは|健全度I〜IVと点検頻度の変更(カンツール)
- 【八潮道路陥没】トラック運転手遺族が埼玉県提訴、1億2500万円賠償求める(コノユビニュース)