お金持ちから取ればいいのに、
ダメなの?

――与党の閣僚たちが、財務相に

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10/21 08:00 / 発信国:イギリス / 記者:工藤

英財務相、資産課税の強化を見送り 根拠の試算は7月から公開が止まっていた

イギリスのジョン・ヒーリー財務相が、10月28日の予算案で、キャピタルゲイン課税の税率を上げるのをやめた。身内の閣僚から「上げてほしい」と求められていたのに、断った。理由は、上げると税収が減るからだ。増税して減るって、どういうこと?

英国税庁(HMRC)の試算が、その理由になっている。高い方の税率を10ポイント上げると、2028〜29年度に税収が36億ポンド(1ポンド約210円で、約7,600億円)減る。前の年度も20億ポンド余りのマイナス、2026〜27年度も5億4,000万ポンドのマイナスだ。理屈はこうだ。税率が上がると分かれば、持っている人は売るのをやめる。売らなければ、もうけは出ない。もうけが出なければ、税金も取れない。資産ごと国外に移す人も出る。財務省の関係者は、こうした動きで結局は国庫が損をすると説明している。タイムズとフィナンシャル・タイムズが先に報じた。

上げてほしいと言っていたのは、身内だった

求めていたのは野党ではない。筆頭国務相のルイーズ・ヘイ氏と、国防相のウェス・ストリーティング氏。どちらも閣僚だ。ほかに労働党への献金者デイル・ビンス氏、元党首のニール・キノック氏、シンクタンクのIPPRも引き上げを求めていた。

一方、アンディ・バーナム首相の助言役を務めるジム・オニール氏(元ゴールドマン・サックスのチーフエコノミスト)は、キャピタルゲイン課税の引き上げは企業に「まったく間違ったメッセージ」を送ることになると話した。ヒーリー財務相自身も「私はこの国を、富を生み出す国にしたい」と言っている。

では、お金はどこから取るのか。予算案の主な財源は、銀行のもうけへの課税になりそうだ。2023年に8%から3%へ下げた上乗せ税を元に戻し、年20億ポンド(約4,200億円)を集める案が報じられている。

世論では多数派。それでも通らない

調査会社サベーションが10月2〜5日、18歳以上の2,037人に聞いた結果(税の公平を求める団体Tax Justice UKの依頼)では、資産1,000万ポンド(約21億円)を超える人への増税に63%が賛成した。銀行の超過利益への課税には61%。逆に「増税ではなく公共サービスを削るべきだ」は28%にとどまった。

アンケート用紙とえんぴつ
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同じ調査で、政府がいま誰を優先しているかを聞くと、「大企業」が71%、「資産1,000万ポンド超の超富裕層」が67%。「働く人や小さな会社」は43%だった。Tax Justice UKのファイザ・シャヒーン代表は、超富裕層と利益を上げる銀行への課税は「目の前にあるがら空きのゴール」であり、外す余裕はないと話した。つまり「資産を持つ人がもっと払うべきだ」は、イギリスの世論では多数派なのだが、決める場所では通らなかった。

しかも、見送りの根拠になったHMRCの試算は、一度公開が止まっている。2026年7月7日に出す予定だった最新版を、前日の6日に延期した。HMRCの担当者は、推計の土台になっている重要な前提のいくつかを見直すため、公表を延ばしたと説明した。会計事務所ムーア・キングストン・スミスのティム・ストーボルド氏は、増税の影響について、HMRCが従来の見方を根本から変えるのではないかと心配している。「上げると減る」という数字は、いまも作り直しの途中にある。

日本は、むしろ逆に動いている

日本も、同じ形の不公平を抱えている。給与には所得税と住民税で最高55%かかるのに、株の売却益や配当は一律20%(所得税15%+住民税5%。復興特別所得税を入れて20.315%)。だから、もうけの多くが金融所得の人ほど、負担の割合が低くなる。これが1億円の壁と呼ばれてきた。

日本円の硬貨と電卓
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ただ、日本はイギリスと逆に動いている。2025年に始まった極めて高い水準の所得に対する課税は、いま控除3億3,000万円・税率22.5%。これが2026年度(令和8年度)の税制改正大綱で、2027年分から控除1億6,500万円・税率30%に変わる。合計所得が年6億円前後の人まで負担が増える見込みだ。NISAはつみたて枠を未成年にも広げる方向で、下は広げ、上は締める形になっている。

イギリスは、上げれば税収が減るという見積もりを理由に見送った。日本は2027年分から、富裕層の最低税率を22.5%から30%へ上げる。同じ「資産への課税」で、2つの国の答えは、いま逆を向いている。

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