論文を書いたことは、
ありますか
――英国で、DNAを売る会社が、注文した人に
写真はイメージ Photo by Brecht Corbeel on Unsplash
内閣府が、DNAの注文に本人確認を入れようとしている
内閣府が、DNAやRNAの配列を人工的に作る会社に向けて、ルール作りを始めた。10月13日に開いた有識者会議で方針を示し、2027年の初めをめどに取りまとめる。日本経済新聞によると、注文された配列が病原体や毒素に関わるものでないかを調べ、悪用の恐れがあるときは、注文した人の身元と使い道を確かめてもらう内容になる。
DNAを注文する、という言い方に驚くかもしれない。この「核酸合成」という技術は、普段は薬を作ったり、遺伝子を調べたりするのに使われている。製薬会社などが「この配列を作ってほしい」と頼み、専門の会社が受けて作る。DNAには、注文の窓口がある。
なぜ、いま決めるのか
きっかけはAIだ。AIが進んで遺伝子配列の設計がしやすくなり、人工のウイルスを作られるのではないかという心配が強まっている、と日本経済新聞は伝えている。
米国と英国は、すでに同じような指針を出している。日本の動きには、その国際的なルール作りに歩調を合わせる狙いがある。内閣府は、2026年度中に改めるバイオエコノミー戦略にも、この話を反映させるつもりらしい。
では、注文する側は何を出すことになるのか。日本の中身はこれからだが、先に作った英国を見ると、形が見える。
英国が確かめるのは、研究者として本物か
英国政府が2024年10月8日に出した指針は、合成した核酸を売る会社に、客の名前と住所を集めるよう求めている。客が個人でないときは、注文する権限を与えられた人の名前も要る。何に使うのかの説明も要る。
それだけでは終わらない。次のどれか1つ以上を出してもらうことになっている。所属先のバイオセーフティ担当者の名前、論文の発表歴、ORCID、英国の会社ならVAT(付加価値税)の登録番号だ。
並べてみると、身分証の話ではない。米国の指針も、使い道や所属先、論文の発表歴、ORCID、事業の免許、助成金の番号などを挙げている。どちらの国も狙いは同じで、注文してきた相手が、本当に研究の仕事をしている人かを見分けようとしている。
調べる対象は、50塩基以上のDNAとRNA。懸念される配列の注文は記録を残し、客の情報も少なくとも3年は保存する。米国も、記録は少なくとも3年としている。
焦点は、研究を止めずに線を引けるか
内閣府は、悪用の恐れがあるときに調べるだけでなく、注文する相手がふさわしいかを前もって確かめる仕組みを入れることも考えている。ここが、ややこしい。確認をきつくすれば、普通の研究や薬作りの足まで止まりかねない。かといってゆるくすれば、防ぐ意味が薄くなる。どこに線を引くかが、取りまとめまでの焦点になりそうだ。
国の経済を守るという別の心配も、同じ会議で扱われている。バイオ医薬品の分野で、研究開発や製造の受託を中国の企業が増やしている。それを踏まえ、国内の基盤を強くする策も合わせて考えられていると、日本経済新聞は書いている。
英国では、DNAを売る会社が、注文してきた相手に論文の発表歴を尋ねることがある。日本で同じ線が引かれるかどうかは、2027年の初めに分かる。
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- 「核酸合成」を悪用したバイオテロ防止へ 内閣府がルール作りに着手
- 政府、バイオテロ対策で企業向け指針策定へ AI悪用リスクに対応(日本経済新聞)
- UK screening guidance on synthetic nucleic acids for users and providers(英国政府)
- Screening Framework Guidance for Providers and Users of Synthetic Nucleic Acids: Frequently Asked Questions(米国保健福祉省 ASPR)
- バイオエコノミー戦略(内閣府 科学技術・イノベーション)
- What is ORCID?(ORCID)